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費用・資金計画

アパート・一棟マンションの大規模修繕費用相場は?戸数別の目安と収益性を維持するポイント

アパートや一棟マンションの大規模修繕では、「何戸ならいくら必要か」「見積もりが高いのか安いのか」が気になるところです。ただし、費用は戸数だけで決まるものではなく、構造・劣化状況・工事範囲に加え、入居者対応まで含めて考える必要があります。本記事では、賃貸住宅を対象とした公的資料から戸数別の目安を整理し、収益性を維持するための費用の考え方と施工会社選びのポイントを解説します。

目次

アパート・一棟マンションの大規模修繕費用相場|戸数別の目安と考え方

費用相場は予算を考えるための目安であり、実際の工事価格そのものではありません。

国土交通省の「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」では、木造10戸やRC造20戸などのモデルごとに長期的な修繕費のイメージが示されています。一方で、個別物件によって具体的な時期や金額は異なるとも明記されています。

大規模修繕の費用相場は「戸数×単価」だけでは決まらない

戸数だけを使った掛け算では、実際の大規模修繕費用は算出できません。

同じ10戸でも、木造2階建てとRC造4階建てでは、外壁面積や屋根・屋上、共用廊下、階段などの条件が異なります。さらに、表面の塗り替えだけで済む建物と、ひび割れ、タイル浮き、鉄部腐食、防水層の劣化まで補修する建物では、必要な工事も変わります。

アパートと一棟マンションでは構造・規模・工事範囲によって費用が変わる

建物構造によって、修繕対象となりやすい部位や工法は異なります。

木造・鉄骨造アパートでは屋根や外壁、外階段など、RC造では外壁タイル、シーリング、躯体、屋上防水などが費用に影響しやすくなります。構造だけで高い・安いと判断せず、実際にどこまで施工するのかを見ることが重要です。

費用相場は予算計画の目安として使い、建物診断後の見積もりで判断する

最終的な予算は、建物の現状を診断してから決める必要があります。

国土交通省も、定期点検で不具合を確認し、修繕時期が近づいたら劣化診断や専門的な検査を行い、その結果をもとに修繕内容を設計して見積もりを取る流れを示しています。

大規模修繕の費用を左右する主な要因

総額を大きく左右するのは、戸数よりも実際の施工条件です。

建物の戸数・階数・延床面積

建物が大きくなれば、施工する面積や数量も増える傾向があります。

ただし、同じ戸数でも住戸面積、建物形状、階数によって外壁や共用部の面積は変わります。そのため「10戸だから○万円」と決めるのではなく、実際の施工数量を確認する必要があります。

木造・鉄骨造・RC造など建物構造の違い

構造によって必要な補修工事は変わります。

木造・鉄骨造では屋根や鉄部、RC造ではタイルの浮き、躯体のひび割れ、屋上防水などが加わる場合があります。築年数が同じでも劣化状態は同じではないため、構造と現況をセットで考えましょう。

外壁・屋根・防水・鉄部など工事範囲の違い

施工対象が増えれば、工事総額も変わります。

外壁だけなのか、屋根・屋上防水、シーリング、鉄部、共用廊下・階段まで施工するのかを確認します。一方、同時施工によって足場などを共用できるケースもあるため、単純に工事項目を減らせば得になるとは限りません。

劣化状況と下地補修の必要性

仕上げ材よりも、下地の劣化状態が費用差につながることがあります。

外壁塗装であれば、施工面積だけでなく、チョーキング、ひび割れ、塗膜の浮き、サイディング等の欠損などを確認する必要があります。高圧洗浄や下地調整、ひび割れ補修など「塗る前に何をするのか」まで見積もりで確認することが重要です。

足場・仮設工事や立地条件による違い

安全に施工するための仮設・管理体制も費用の一部です。

足場や養生だけでなく、資材搬入、道路や隣地との関係、入居者が通行する共用部の安全確保なども施工計画に影響します。足場費だけを切り離して見るのではなく、工事全体を安全・円滑に進める体制まで確認しましょう。

戸数別・規模別に見る大規模修繕費用の目安【比較表】

公的資料では、賃貸住宅の構造・戸数別に長期修繕費のモデルが示されています。

国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」による目安は次のとおりです。なお、外壁・防水工事だけの「大規模修繕1回分」ではなく、設備修理・交換なども含む長期修繕モデルである点に注意してください。

賃貸住宅モデル11~15年目21~25年目30年間の累計
木造10戸・1K棟あたり約520万円棟あたり約800万円約1,740万円
RC造20戸・1LDK~2DK棟あたり約1,090万円棟あたり約2,320万円約4,490万円
上記以外の戸数・規模個別算定が必要個別算定が必要個別算定が必要

RC造20戸モデルでは、11~15年目が戸あたり約55万円、21~25年目が約116万円、30年間では戸あたり約225万円とされています。ただし国土交通省も、個別物件によって時期・金額は異なるとしています。

小規模アパートの大規模修繕費用の目安

木造10戸モデルでは、11~15年目に棟あたり約520万円が示されています。

21~25年目には屋根・外壁の塗装・葺き替え、ベランダ・階段・廊下の塗装・防水工事などが想定され、棟あたり約800万円です。築年数に応じて必要な内容が変化する点にも注意しましょう。

中規模アパート・一棟マンションの大規模修繕費用の目安

RC造20戸モデルでは、11~15年目に棟あたり約1,090万円が示されています。

21~25年目では約2,320万円、30年間では約4,490万円です。ただし、室内設備や給排水管なども含む長期モデルであり、実際の大規模修繕見積もりとは区別して考える必要があります。

戸数の多い一棟マンションの大規模修繕費用の目安

30戸・50戸などの規模は、10戸や20戸モデルの単純比例では判断できません。

階数、延床面積、エレベーター、屋上面積、外壁仕様、共用設備などの条件が大きくなるため、建物ごとの診断・数量算出が必要です。

戸数が増えても費用が単純比例しない理由

住戸数に比例する費用と、棟全体に発生する費用が混在するためです。

設備交換など戸数に連動しやすい工事がある一方、足場や現場管理などは「1戸ごと」に発生するものではありません。戸あたり単価だけを見ると、実際の費用構造を見誤る可能性があります。

工事項目別に見る大規模修繕費用の内訳

工事費は「何を、どの範囲まで直すか」の積み重ねです。

外壁塗装・外壁補修

外壁では施工面積と下地補修の内容を確認します。

単価だけで比較するのではなく、高圧洗浄、ひび割れ補修、浮いた塗膜の除去、サイディング補修などがどこまで含まれているかが重要です。同じ「外壁塗装」という項目でも、施工内容が同じとは限りません。

屋根・屋上防水

防水工事は既存防水層の状態と工法選定がポイントです。

表面を塗り重ねればよい場合もあれば、既に水が侵入し下地に湿気が残っているため、湿気を逃がす構造(通気緩衝工法)が必要なケースもあります。見積もりでは「屋上防水一式」だけでなく、なぜその工法を採用するのかまで確認しましょう。

シーリング・タイル補修

補修数量によって費用が変動しやすい工事項目です。

シーリングの劣化範囲やタイルの浮き・欠損は調査で確認します。足場設置後の打診調査などで数量が増減する契約では、追加費用の算定方法についても事前確認が必要です。

鉄部・共用廊下・階段

賃貸物件では安全性と入居者の生活動線も重要です。

階段や手すりの鉄部腐食、廊下床の劣化などは入居者が毎日利用する場所に関係します。完成後の性能だけでなく、「施工中にどう通行してもらうのか」という施工計画まで確認する必要があります。

足場・仮設工事・施工管理

仮設工事や施工管理は工事を安全に完成させるために必要です。

足場、養生、資材管理だけでなく、入居者への案内、安全対策、工程変更時の対応なども含め、誰が何を担当するのかを確認します。価格だけでは見えにくい部分ほど、施工会社ごとの差が表れます。

実際の施工事例に見る「費用に含めて考えたい対応品質」

賃貸住宅では、技術力と入居者対応をセットで比較することが重要です。

築29年RC造マンション|工法選定と入居者対応まで考えた大規模修繕

建物に適した施工と入居者への配慮を両立した事例です。

東京都目黒区の築29年・RC造2階建マンションでは、建物診断で外壁タイルの目地が風化して外壁表面に流出している状態(エフロレッセンス)や、屋上防水の塗膜が摩耗して下地が露出している箇所を確認しました。外壁塗装・タイル補修・屋上防水・シーリングを組み合わせ、屋上では防水層の膨れや剥離リスクを考慮して通気緩衝工法による防水工事を実施しています。

この物件でオーナー様が終始重視していたのが、「入居者様にできるだけ負担を掛けたくない」という点でした。そのため当社では、賃貸物件での大規模修繕経験を踏まえて入居者の生活環境への配慮を行い、工事期間中も丁寧な案内と対応を継続。その結果、入居者対応に関するトラブルなく円滑に工事を完了しています。

>>【施工事例】築29年RC造マンション|工法選定と入居者対応まで考えた大規模修繕を見る

築34年木造アパート|片側施工で入居者の通行動線を確保

賃貸物件では「工事中も生活できる施工計画」が求められます。

神奈川県川崎市の築34年・木造2階建アパートでは、外階段・廊下の鉄部に腐食や錆による欠損が確認されました。オーナー様から「ご入居者様に迷惑を掛けないように」との要望があったため、階段を一度に使用できなくするのではなく、片側ずつ交互に作業を進め、入居者が通行できる動線を確保しながら施工しています。

全面を一度に施工する方法と比べれば、工程の組み方や安全管理に手間が増える場合があります。しかし、入居者が毎日利用する賃貸住宅では、施工効率だけを優先せず、生活への影響を抑える視点も欠かせません。

>>【施工事例】築34年木造アパート:片側施工で入居者の通行動線を確保した大規模修繕を見る

賃貸物件では工事品質だけでなく入居者対応も費用対効果を左右する

入居者対応の質は、賃貸経営上のリスクにも関係します。

大規模修繕では、足場による圧迫感、騒音や臭気、バルコニー・廊下・階段の利用制限などが生じることがあります。説明や安全対策が不十分であれば、施工品質に問題がなくても入居者の不満につながる可能性があります。

仮に、それが一因となって退去が生じ、家賃7万円の部屋が6か月空室となれば、単純計算だけでも42万円の賃料収入を得られないことになります。さらに入居募集費用や原状回復費などが加わるケースも考えられます。

これは「大規模修繕をすると退去する」という意味ではありませんが、入居中の賃貸物件では、工事費を数万円下げること以上に、既存入居者への負担やトラブルを抑えることが経営面で重要になる場合があります。

大規模修繕の見積もりは総額だけで比較しない

重要なのは「いくらか」と「何を任せられるか」の両方です。

同じ工事項目でも施工内容・下地処理・工法は異なる

見積書に同じ工事名があっても、中身まで同じとは限りません。

例えば屋上防水でも、目黒区事例のように現状の下地の状態を踏まえて、通常のシート防水ではなく通気緩衝工法を選ぶケースがあります。材料名、下地処理、施工方法、工程まで確認し、「なぜこの施工なのか」を説明できる会社を選ぶことが大切です。

入居者への告知や問い合わせ対応を誰が担うか確認する

入居者対応の担当者と対応範囲は、契約前に確認しましょう。

工事前の説明、生活への影響の告知、問い合わせ対応、工程変更時の連絡を施工会社が行うのか、管理会社やオーナーが行うのかによって負担は変わります。見積価格だけでなく、対応範囲まで横並びで比較してください。

共用部の安全対策や近隣対応まで見積もり時に確認する

工事中の安全確保も、施工会社選びの判断材料です。

川崎市の事例では、施工効率だけを優先せず、階段を片側ずつ施工して入居者の通行を確保しました。こうした対応には工程調整が必要ですが、住みながら工事を行う賃貸住宅では重要な施工品質の一つです。

安さ・高さではなく「その費用でどこまで任せられるか」で判断する

最安値が最も費用対効果に優れているとは限りません。

一方で、高額であれば安心とも限りません。診断力、工法選定、施工品質、施工管理、入居者対応、安全確保まで確認し、「提示された金額に対して、どの範囲を専門家として任せられるのか」で判断することが重要です。

価格を抑えた見積もりでは、入居者への告知や工事中の調整を管理会社・オーナー側が担う条件になっていることも考えられます。単純な金額差だけでなく、こうした見えにくい負担も含めて比較しましょう。

大規模修繕で収益性を維持するためのポイント

修繕費は、賃貸収入を守るための経営コストでもあります。

修繕の先送りで劣化範囲と将来費用を増やさない

劣化が軽いうちに対応するほど、工事範囲を抑えやすくなります。

国土交通省も、定期的な点検で不具合を早く発見できれば部分的な修繕で対応でき、将来的なコストを抑える効果が期待できるとしています。

必要な修繕と物件価値を高める改修に優先順位をつける

まず安全・防水など建物保全に関わる工事を優先します。

そのうえで外観や共用設備など、入居募集や物件価値に関係する改修を検討します。限られた予算を一律に削るのではなく、「今やるべき工事」と「後でもよい工事」を整理することが重要です。

工事中の入居者負担を抑え退去リスクにも配慮する

既存入居者への配慮も、収益性を守る一つの考え方です。

大規模修繕による一時的な不便を完全になくすことは難しくても、事前説明、安全な動線の確保、問い合わせ対応などで負担を抑えることはできます。入居中工事のノウハウを持つ施工会社かどうかも確認しましょう。

修繕後の保有期間と賃貸経営方針から投資額を考える

今後の保有期間によって、適切な修繕投資は変わります。

今後20年以上所有する物件と、近い将来に売却・建て替えを検討する物件では、必要な耐久性や投資範囲も同じではありません。大規模修繕だけを切り離さず、賃貸経営全体から判断します。

大規模修繕に備える資金計画の立て方

修繕が必要になってから資金を考えるのでは遅い場合があります。

将来の修繕時期を想定して計画的に資金を確保する

長期修繕計画を作り、将来の支出を見える化します。

国土交通省は屋根の塗装・補修を11~15年目、防水・葺き替えを21~25年目、外壁塗装を11~18年目など、部位別の目安を示しています。

修繕費用を一度の支出ではなく長期の賃貸経営コストとして考える

30年間など長期で必要額を把握することが重要です。

国土交通省モデルでは、木造10戸・1Kで30年間約1,740万円、RC造20戸・1LDK~2DKで約4,490万円です。単発の工事だけでなく、複数回の修繕を前提に資金を準備します。

自己資金・融資・修繕計画を組み合わせて資金負担を平準化する

資金不足が予想されるなら、必要になる前に対策します。

毎月の賃料収入から修繕資金を確保し、必要に応じて融資も含めて検討します。工事直前になって資金不足が判明すると、必要な補修まで先送りせざるを得ないため、早めの準備が重要です。

アパート・一棟マンションの大規模修繕費用でよくある質問

費用の疑問は、相場と個別物件を分けて考えると整理できます。

大規模修繕は何年ごとに行う必要がありますか?

すべての工事を同じ周期で行う必要はありません。

国土交通省の目安では、屋根の塗装・補修は11~15年目、外壁塗装は11~18年目、タイル張り補修は12~18年目などとされています。実際には点検・診断結果を優先してください。

10戸・20戸など戸数だけで大規模修繕費用を計算できますか?

戸数だけでは正確な見積もりはできません。

戸数別モデルは資金計画の参考になりますが、構造、階数、延床面積、劣化状況、工事範囲、立地条件などによって実際の費用は変わります。

大規模修繕費用を抑えるために工事を分けてもよいですか?

優先順位が明確であれば、分割施工も選択肢です。

ただし足場が必要な工事を何度も分けると、仮設工事が重複する場合があります。診断結果から、同時に行う工事と先送りできる工事を整理しましょう。

大規模修繕中の入居者対応は施工会社に任せられますか?

対応範囲は施工会社によって異なります。

目黒区の事例では、工事期間中も入居者への丁寧な案内と配慮を継続し、川崎市の事例では通行できるよう階段を片側ずつ施工しました。こうした対応まで任せられるか、契約前に確認することが重要です。

相見積もりではどの項目を比較すればよいですか?

総額だけでなく、工事内容と対応範囲を比較してください。

施工数量、材料、下地補修、防水工法、足場、保証、施工管理だけでなく、賃貸物件では入居者への案内、問い合わせ対応、生活動線の安全確保、近隣対応も確認します。

大規模修繕で重要なのは、単に「安い会社」を選ぶことではありません。施工品質・専門性・管理力・入居者対応まで含め、その費用でどこまで安心して任せられるのかを見極めることが、アパート・一棟マンションの収益性を維持するうえで大切です。

【施工事例】

【出典】

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