駐車場付きの物件をお持ちの大家さんにとって、
駐車場は入居付けのための大事な要素であるとともに、トラブルを抱えがちな悩みの種でもあります。
駐車場内でのトラブルは私有地のトラブルとして、捉えられ、
警察が介入しにくく、トラブル解決にはなかなか骨が折れるものです。
今回は代表的な駐車場トラブルと、その解決案についてお伝えします。
★★代表的な駐車場トラブル★★
■無断駐車
敷地内や駐車場などの私有地の場合、道路交通法では罰することができず、
警察も対応できないトラブルです。
かといって、勝手にレッカー移動する、逆に移動できないようにタイヤをロックすることもできず、
対応に苦慮することになるでしょう。
〇無断駐車された際の対応
車の所有者とやりとりをして、解決しなくてはいけません。
証拠をしっかり確保して、所有者を特定し、対応していきましょう。
1.車両・ナンバーを撮影し、警告文の貼り付け
証拠を確保し、無断駐車禁止の旨を貼り付けるのですが、
張り紙を車両や窓ガラスにテープで張り付けると、器物損壊罪になる場合があります。
車を傷つけないように、ワイパーに挟むなどの方法で行いましょう。
2.警察に通報
直接トラブルの解決にはつながりませんが、アドバイスをしてくれたり、
場合によっては、事件性のない車か調べたり、車の所有者へ連絡したりしてくれることもあります。
3.所有者を特定し、直接注意喚起
警告を無視して、無断駐車を繰り返したり、そのまま車を放置された場合は、
所有者を特定し、直接やりとりしなくてはいけません。
・陸運局、自動車検査登録事務所にて、所有者情報の開示請求
個人情報保護法が施行された以降は、自動車のナンバー(自動車登録番号)に加え、
車台番号が分からないと照会できなくなりました。
しかし、車両が放置されている場所、見取り図、放置期間、放置車両の写真など、
無断駐車されている状況が分かる資料を追加することで、
車の所有者の氏名、住所等を開示を求めることができるようになっています。
4.最終手段は弁護士を通じて訴訟
弁護士を介して、民事訴訟による損害賠償請求の手続きを行います。
■不法投棄
対応は無断駐車と同じになります。
長期間放置されている場合でも、所有権は放棄されていないと判断され、
手を出すと損害賠償請求および器物損壊罪に問われる可能性もあります。
まずは警察に通報。事件性がある場合は警察が車両を押収してくれますが、
それが難しい場合は、撤去を請求、訴訟が必要になります。
訴状の「請求の趣旨」では、放置自動車の撤去のほか、
撤去に至るまでの駐車料金相当損害金の請求をします。
金額は、近隣のコインパーキング代などを参考にしてください。
訴訟後、判決を債務名義として、放置自動車強制執行をする場合、
1.放置自動車の差し押さえ
判決で認められた駐車料金相当損害金を債権として、放置自動車の差押え(競売手続)の申し立てをします。
2.譲渡命令申し立て
裁判所が定めた価格以上で買い受けるか、中古車販売業者などに声をかけ、落札してもらいましょう。その後、自分の持ち物として転売か、廃車手続き
などをとれます。
放置自動車が無価値であると認められた場合には、
判決に基づき、土地明け渡しの強制執行の申し立てをすることになります。
執行官により放置自転車が無価値であると確認された後に、ようやく処分できます。
■はみ出し等、駐車場利用のマナー違反
入居者から相談された時は、まずは証拠集めから始めましょう。
マナー違反の様子を撮影して、それが何度も繰り返されている状態ならば、
手紙等で注意をします。
改善されない場合は、駐車場契約の解約も視野に入れましょう。
■車上荒らし
車上荒らしは刑法上の犯罪ですので、警察に被害届を出し、対応してください。
また、車上荒らしがあったことは入居者に周知し、注意を促した方が良いでしょう。
・必ずカギは閉める
・金品だけでなく転売・監禁可能なもの(ゴルフバックや釣り具など)は積みっぱなしにしない
など、車上荒らしに合わない車にしてもらうことと、
大家さん自身も駐車場の防犯について一度考えた方が良いでしょう。
■車両盗難・車パーツの盗難
最近増えているのが、マンションやアパートの車両盗難。
ターゲットが海外などに転売できるプリウスやレクサスなどの
乗用車に移り変わり、個人宅やアパート・マンションでの被害が増加しています。
特にスマートキーを使用している高級車は、キー解除するツールが出回っているので、
狙われがち。
大家さんに損害請求されることはありませんが、
自物件で被害があれば、早急に対応しなくてはいけません。
★★トラブルを解決するアイデア★★
■防犯面の強化
一番は防犯カメラの設置が効果的でしょう。
ダミーカメラでも抑止力はありますが、実際にトラブルにあった場合、
スムーズに解決できるのは防犯カメラです。
センサーライト付きの防犯カメラもあるので、照明としても役立ちます。
■敷地の見直し
見通しが悪い、ラインが消えかけている、アスファルトがひび割れているなどの
不便があると、事故や盗難などの危険性が出てきます。
駐車場の利用状況を見て、1台分減らして、間隔を広げるなどの改修もおすすめです。
■駐車場契約書の見直し
駐車場の利用に際し、入居時には契約書・駐車場の利用規約は必ず渡しましょう。
ルール違反が契約解除の条件となることや、
罰金(使用料・延滞料など名前を変えて)も設定しておいた方が抑止力になるかもしれません。
■違反車両への警告
違反車両への警告は、分かりやすく、なおかつ罪悪感を感じてもらえるようなものがいいでしょう。
見やすい色、文字で作ってみましょう。
■迷惑駐車の予防策
1.看板設置
契約者以外は駐車できないことをはっきり看板で伝えましょう。
「空いているからいいや」と停めて、迷惑をかける人もいるので、そういった人に対しては
「契約外の車が駐車されていた場合は、駐車代として1時間〇円かかります」
と、駐車場を利用している人たちにはきちんとお金が発生していて、
空いていても利用する場合は同様にお金がかかることを分からせることが大事です。
2.カラーコーンやチェーンの設置
駐車するのに手間がかかれば、そこで諦める可能性は高くなります。
可能ならば、カラーコーンは重石入りで2本置くか、
専用のスタンド看板など重さと大きさがある程度あるものが良いでしょう。
ただ、すでに無断駐車されている車に対しては車両を塞ぐなどの制裁は禁止されているので、
気を付けてください。
物件同様、駐車場は手間がかかりますが、他物件の差別化として有効な設備でもあります。
ぜひ一度、見直してみて、問題が起こる前に対処。
実際に問題があった場合も、すぐ動けるよう準備しておきましょう。