共同住宅で起こるトラブルの代表例とも言える、騒音トラブル。
環境省の「令和3年度騒音規制法等施工状況調査」を見ると、
同年度に全国の地方自治体が受理した
家庭生活が発生源の苦情は1389件。5年前より約37%増えています。
コロナ禍を経て、在宅で過ごす人が増えたこと
オンラインでのボイスチャットやゲームが盛んになっていること
室内飼育のペットが増えていること
入居者の生活リズムが多様化していること
など、入居者の暮らしに変化があったことも影響しているのかもしれません。
今回は改めて騒音トラブルについてどう対応すればよいか
調べてみました。
■騒音対策は大家さんの義務でもある
大家さんは、賃借人に対して「使用収益させる義務(民法601条)」があります。
入居者が安心して暮らせる生活環境を提供する責任があるということです。
騒音トラブルが発生している場合、その原因となっている状況を放置してしまうと、
「使用収益させる義務」に反する可能性が出てきます。
また騒音トラブルを放置すると、退去者が続出したり、
警察沙汰や訴訟に発展する危険性もあるため、
訴えを受けたら、解決するかは別として、
早めに対応する姿勢を見せることが重要になります。
■まずは状況把握
騒音問題が発生した場合、被害を訴えている方や当事者以外の入居者にも
ヒアリングをして、状況を把握する必要があります。
・音に気が付いたのはいつからか(いつ、具体的な日時)
・どのような音がするのか
(機械・設備音、足音、人の声(笑い声・怒鳴り声etc)など)
・音が聞こえる頻度や時間帯(毎日なのか特定の日なのか など)
・音が聞こえる部屋の位置(上階なのか隣なのか など)
紙のアンケートも有効ですが、最近だと
GoogleフォームなどWEB上にある無料のアンケート機能を活用すると、
投函してもらう手間もなく、回答率があがるかもしれません。
また決まった時間に騒音がするのであれば、被害を訴えている入居者のお部屋に入り、
一緒に聞いてみるのもひとつの手です。
また録音が可能ならば、お願いしてみましょう。
■入居者全員に対する通知
まずはアパートの入居者自身で騒音に気を付けてもらえるよう、
音の特徴や頻度について記載したお手紙を入れるか、掲示物を貼ります。
■直接、本人に連絡を入れる
騒音トラブルが改善されない場合、
事前のヒアリングや状況を見て、原因となる入居者へ
直接まずは書面(控えも持っておく)にて、ご連絡を入れます。
注意を書面で残すことで、万が一の時にも対応できます。
また、直接会うと新たなトラブルに発展する可能性もあるので
対面での注意が必要になった場合は
管理会社の方とご一緒したり、お任せすることも手です。
■防音のポイント
騒音トラブルが増えている一方で
防音がしっかりしている物件の注目度は高いです。
防音のポイントは遮音と吸音、防振、制振と言われています。
・遮音と吸音
空気中で伝わってくる音を遮断して、外へ音が透過しないようにすること。
防音の基本はまず遮音と言われています。
遮音により跳ね返った音は、吸音で音を吸収することにより、
防音効果が大きくなると言われています。
マットやカーテン、壁面パネルなどでも対応ができます。
・防振
振動源(音源)からの振動を小さくするため
壁や床との間にゴムなどクッションを挟む方法のこと。
ドアを開け閉めする音がうるさい!といった振動系の騒音には
こちらの対応が有効と言えるでしょう。
・制振
支柱を増やすなどして、音源の振動を直接抑える方法。
地震などの災害にも有効な方法です。
■騒音改善がない場合、契約解除も可能
騒音に関して、注意をしたにもかかわらず、改善が見られず、
信頼関係が破壊されたとみなされれば、
契約解除が認められることがあります。
騒音の実態や他の入居者のご意見、書面で注意をしたことも
まとめて、契約解除の必要性を訴えましょう。
「騒音はお互い様」と言ってくれる入居者さんもいるかもしれませんが、
そう言ってもらえる信頼関係を築くためにも、
早々に誠実な対応が必要になります。
解決しようと動くよりまずは「話を聞こう」と行動してみましょう。