魅力を感じるコンセプト「防災賃貸住宅」

かつて賃貸住宅において「防災」を意識する人は少ないとされてきました。
しかし、度重なる自然災害、近々起こると懸念されている
首都直下地震と南海トラフ地震などもあり、「防災」を意識する傾向
シフトしてきたといわれています。

SUUMOリサーチセンターによる「2021年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」によると、
魅力を感じるコンセプト賃貸住宅の1位は「防災賃貸住宅」でした。

また昨今では公的機関の支援「公助」を重要視せず、
「自助」「共助」による災害対策が呼びかけられています。

今回は現在の災害対策に対する考え方と
「防災賃貸住宅」とはなにかを調べてみました。

■自宅を避難場所とする「在宅避難」という考え方
都市部を中心に、人口に対する避難所の数は十分ではなく、
「災害時はとにかく避難所へ行く」という考え方が
災害対策の基本とは言えなくなってきています。

そこで注目が集まっているのが、自宅を避難場所とする「在宅避難」という考え方です。

「在宅避難」とは災害が発生した際、自宅で身の安全が確保されるのであれば、
避難所に向かわずに、自宅で避難生活を送る方法のことをいいます。

・自宅の損傷が少ない
・土砂災害や、高潮・河川氾濫による浸水のリスクがない
・地震発生の際、余震による倒壊のリスクがない
・生活するのに支障がない

以上の場合は、在宅避難を選択しても良いとされています。

また避難所に比べて、

・感染症のリスクが小さい
・住み慣れた家で避難生活が送れる
・トラブルや犯罪被害にあうリスクが小さい
・ペットと一緒にいられる

点も、メリットとなっています。

防災は災害が発生した時だけでなく、その後の生活までも含めて
考えていかなくてはいけない。

自物件が「入居者の避難場所」となることも
これからは意識しておくべきでしょう。

■災害に備えた安全な建物づくり
建物が老朽化しているにもかかわらず、メンテナンスを怠っていたせいで
被害が起こった場合はオーナーへの損害賠償が発生する可能性もあります。

入居者や周辺住民の安全を確保するためにも安全な建物づくりはオーナーの義務でもあります。

〇古い建物はリフォームや建て替えも検討
能登半島地震では建物被害が相次ぎました。
共通する部分としては、やはり建物が古いところ。
特に1981年(昭和56年)5月31日、までに建築確認が行われた建物は、
旧耐震基準に基づいて建てられています。

旧耐震基準では震度5の地震に耐えられることが基準でしたが、
現在の新耐震基準とよばれる基準では
震度6強から震度7の揺れで倒壊しない設計
となっています。

全国の殆どの自治体で
耐震診断や補強設計、耐震改修工事を実施する際の
補助事業(補助金制度)が実施されています。

相次ぐ地震などの影響で、建物の強度が弱まっている例もあります。
心配な方は、まず耐震診断を検討してみてください。

〇避難経路をふさぐ物がないか確認
共用部や物件の周りなどに、ゴミや自転車などが置かれていると、
災害時に避難の妨げとなります。
駐輪マナーや廊下などの私物の撤去、共用部の使い方など
入居者に徹底するとともに、定期的に点検もしていきましょう。

〇ブロック塀や柵が劣化してないか点検する
災害時、老朽化したブロック塀が倒壊し、被害者を出す可能性もあります。
また避難経路の妨げになることもあるので、
外構の安全性も定期的にチェックしましょう。

■防災用品の備蓄
食料などの備蓄は、入居者へお願いしてよいでしょう。
気にかけておきたいのが「ライフラインへの被害」
特にトイレに対する対応は、重要です。

下流で下水管が破損していると、上階の排泄物で下階の部屋を汚損してしまうこともあります。
東日本大震災の断水は、地震発生時から3週間で復旧したという例をみても、
トイレ対策はオーナーとしても、準備しておきたいところです。

簡易トイレの準備や非常用マンホールトイレの設置についての検討など、
マンションの規模と合わせて、あらかじめ検討しておきましょう。

他にも発電機を準備したり、
入居時や9/1防災の日などの節目に、
防災グッズやハザードマップ(役所などで配布されています)などを
プレゼントして、日頃入居者への防災意識への呼びかけをすることも
考えていきましょう。

■ペット可物件の場合は「在宅避難」に対する備えを意識
災害時、ペットのいる方は避難所に行きづらく、
在宅避難を選択する人も多い可能性があります。

食事やトイレに関しては、普段使っているものを
使用する人が多いと思いますが、
ニーズが高いのが「停電時も最低限の電気が使えるシステム」
蓄電池や発電機、他にも太陽光発電との共用が勧められています。

■入居者、地域住民のコミュニティを支える
災害時に一番力を発揮するのが住民同士のコミュニティです。
賃貸に住む入居者は災害時にも助け合いの輪に入れないこともあります。
住民と地域のつながりを持てるよう支えてあげましょう。
例えば、
・自治会の連絡先や動向を定期的にチェック
・日頃、自治会のイベントやお知らせも掲示する
・部屋の空き室をレンタルルームとして地域の人にも提供
・共用部で不用品の交換場所を作ったり、
 飾りつけのお手伝いなどをしてもらうなどのイベントづくり

など、自物件に合ったやり方を考えてみましょう。

オススメしたいのが「防災・避難訓練」
防災に関するイベントに参加したいと考えている人は
実は多くいると言われています。
ぜひ一度チャレンジしてはいかがでしょうか?