20~22年いわゆるコロナ禍は、多くの人に影響を及ぼしましたが、
経済的な影響を見ると、女性の就業が多いサービス業等の接触型産業が
強く影響を受けたことで「女性不況(She-Cession)」が大きく進んだと言われています。
その影響もあり、20~22年にかけ、女性の自殺者数は3年連続で増えています。
19年 20,169人(男性14,078人 女性6,091人)
20年 21,081人(男性14,055人 女性7,026人) … 前年より増
21年 21,007人(男性13,939人 女性7,068人) … 前年より微減
22年 21,881人(男性14,746人 女性7,135人) … 前年より増
(参照:警察庁)
さらに賃貸住宅の居室内で、いわゆる「孤独死」した人を
性別・年齢階級別の自殺者の割合を見てみると、
男性 | 女性 | |
~20代 | 22.8% | 38.3% |
30代 | 25.4% | 22.1% |
40代 | 21.4% | 16.8% |
50代 | 16.1% | 11.4% |
60代 | 9.3% | 8.1% |
70代 | 4.0% | 1.3% |
80代~ | 1.0% | 2.0% |
かなり20代女性の自殺が多いことが分かります。
孤独死全体<自殺に限らない>を見ると、20代は低くなりますが、
20代~59歳といういわゆる現役世代全体に広げると、
孤独死による死亡年齢構成比の40.0%はこの世代になります。
賃貸による孤独死=高齢者、孤独死は男性に多いというイメージは、
正しいとは言えないということが分かります。
もはや孤独死は世代全体の問題と捉えるべきになっており、
賃貸経営をしているうえで避けられない不幸な事故ともいえるでしょう。
万が一、不幸な事故に遭遇した場合、大家として、なにをすべきでしょうか?
■自物件で不幸な事故が起こった場合
1.警察と保証人や相続人に連絡
入居者の状態をまずは確認します。
外見に著しい変化が見られない場合や、生死の判断ができない場合には、119番をコールして救急車。
腐敗臭やウジ・ハエなどの虫が発生するなど、死亡の可能性が考えられる場合は、
すぐに警察へ連絡してください。
その後、保証人・相続人へ連絡し、状況を説明します。
亡くなられている可能性があっても、入居者の部屋に勝手に入り、
物を動かすなどすると、トラブルに発展する可能性があります。
入居者が亡くなっていても、賃貸借契約は継続され、
保証人や相続人に権利は移っていきます。
2.保証人・相続人、弁護士・保険会社と共に今後のことを進める
賃貸契約の解除へ向けて、敷金の清算や残置物の処分、
損害賠償についての相談をしていかなければいけません。
しかし、相続手続きはすぐに終わらないことが多く、その間残置物は室内に放置されたまま。
次の人に部屋を貸せない期間が続きます。
賃貸借契約の解除と残置物の処分については「残置物の処理等に関するモデル契約条項」が
21年6月に国土交通省と法務省より公開されているので、ぜひそちらもご参考にしてください。
万が一、相続を放棄された場合、大家さんは相続財産管理人の申し立てを立てることができます。
<相続管理人>とは…亡くなられた方に相続人がいない場合や遺族より相続を放棄された場合、
遺産の調査や売却を行うことができる人のことを言います。
家庭裁判所の審判によって選任され、相続財産管理人は相続人の代わりに家賃や管理費などの支払い、賃貸契約の解除、残置物の処分が行えます。
ただし、相続財産管理人を専任する手続きは非常に複雑であり、高い費用が発生します。
賃貸経営にマイナスの影響を与えたことは、相続人に対して損害賠償できる場合があります。
弁護士にも相談しながら、話を進めていきましょう。
また、こうした「事故」や部屋の損傷に対する保険もあるので、
前もって加入することをオススメします。
3.部屋の復旧処置を行う
復旧処置(清掃、リフォーム等)を行う前には
必ず保険会社へ連絡をしましょう。
処置した後に連絡をすると、保険が下りない可能性があります。
清掃に関しては、見た目がきれいであっても、特殊清掃業者に相談するとよいでしょう。
「臭い」は個人により感じ方が違いますし、対応しないと消えない「臭い」も中にはあります。
また、改装が必要な場合は、今後のことを加味して、
空室を解消できる付加価値を加えるとよいでしょう。
お祓いを行う場合は、法要時の写真も証拠に撮影しときましょう。
■告知はどうするか?
・既存入居者
事件性がなくても、警察署が事情聴取を行っている場合もあり、
隠すことはできないと思ってよいでしょう。
詳細は伝える必要がありませんが、
「事件性のない事故により、入居者がお亡くなりになりました。
清掃作業などで日中ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」
程度のご挨拶をしておくと、安心いただけるかもしれません。
賃下げ交渉や退去費用の請求にたいしては、基本対応する必要はありません。
・入居希望者
2021年10月に国土交通省から発表された
「宅建業者による人の死の告知に関するガイドライン」をチェックすると、
以下の場合は告知をしなくてよいとされています。
① 日常生活における自然死、事故死
老衰や持病による病死、不慮の事故(階段からの転落、入浴中の溺死、食事中の誤嚥など)
② 時間経過
上記①以外の死、もしくは①の死において特殊清掃が発生してからおおむね3年経過した場合
③共用部での死
隣接住戸、日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した死
一方、取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合には、
告知をしなくてはいけません。
例えば
●事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案
告知をしなくてよいとした場合でも、上記に当たるならば、告知をする
●入居希望者から事案の有無について問われた場合
と言った場合です。
事故物件であることを伝えるのは勇気がいりますが、
告げずに訴えられた場合は、賠償や退去などにつながってしまうので、
迷った場合は、正直に伝えた方が良いでしょう。
告げる場合
・事案の発生時期(特殊清掃等が行われた場合は発覚時期)
・場所
・死因
・特殊清掃等の対応
をお伝えしましょう。
亡くなった方やご遺族の名誉や生活に配慮し、
氏名や年齢、具体的な様子や発見状況等の詳細については、告知する必要がありません。
■なんとか空室は避けたい!事故物件への対応
・家賃を安くする
一番ポピュラーな方法ですが、安くしすぎると
事件を起こしやすい人間が入居する場合もあるので、バランスは必要です。
・付加価値の高いお部屋にする
家賃を安くして、収入が低くなるくらいであれば、
いっそのこと、リフォームや設備に投資して、
付加価値の高いお部屋にした方が、今後のためにも良いでしょう。
・マンションやアパートなどの建物名、外壁の色を変える
ニュースなどで大きく報じられた場合は、建物の名前を変えたり、
外壁の色などを変えるのもひとつの手です。
色々ありますが、一番はやはり自物件で不幸な事故が起こらないよう対応すること。
入居の段階で
・入居者へ丁寧な聞き取りと審査
・高齢者の場合は社会福祉協議会などのサービス利用、
見守りサービス利用の確認
・家賃債務保証業者の活用検討
・損害保険、少額短期保険の活用検討
は意識しておくとよいでしょう。
家賃の支払いが遅れている、ごみなどが溜まっている、長期間失業している…など
異変があった場合は、可能な限り聞き取りを心がけてみましょう。
生活保護や失業手当が受けられる状態にもかかわらず、動けていない人もいます。
他にも住居確保給付金などの支援紹介や話をするだけでも、入居者自身が状況整理できて、
落ち着くことができるかもしれません。