確定申告において個人事業主の所得税(法人の場合は法人税)は
利益から費用を差し引いた残りの部分に対して課税されます。
収益が同じであれば、費用が多いほど税金が少なくなります。
ただし、税金を計算するうえでの収益や費用は、必ずしも実際の収入や支出と一致しません。
リフォームを行ったら、税金計算上の費用として計上できるかできないかによって、税金の額は左右されます。
今回は、リフォーム時にできる税金の対策について考えてみました。
■修繕費
退去後の原状回復や、共用部の蛍光灯の交換や給湯器の設備、時には外壁塗装や屋根の防水などの大規模修繕などが発生します。修繕費は原則、直した年分の費用になります。
■減価償却費
事業用の資産の経年劣化や使用による価値の減少を費用とし、かかったその年の費用とせず、耐久年数に応じて分配しその期に相当する金額を費用に計上するときにつかいます。
<節税効果が高いのは修繕費!>
例えば、30万円の支出がある場合、修繕費は全額費用計上でき節税効果も期待できますが、資産計上し10%ずつの減価償却になると3万しか費用計上できません。
原則、現状維持や原状回復のための費用は修繕費として全額計上できます。ただし、資産価値が上がったり、耐久年数が長くなるリフォームだと、資産に計上することになります。
<リフォーム時のポイント>
税務上、原則として取得価格が10万円未満、または使用期間が1年未満の固定資産は、事業用として使用をはじめた年分の経費にしてよい、というものがあります。
つまり、10万円以上または1年以上使える固定資産は、全て資産計上になるということですが、実際には特例が2つあります。
●一括償却資産の特例
取得原価が10万円以上、20万円未満の固定資産を一括して事業用として使い始めた年から3年間、取得金額の合計×1/3を費用計上できる。
●少額減価償却資産の特例
青色申告をしている事業主が1単位あたり30万円未満の固定資産を取得したら、その取得金額全額を、事業用として使用を開始した年に計上できる。
多くのオーナー様は青色申告の適用を受けているかと思います。
家具のリフォームや備品を購入する際は30万円未満のものにするとよいと思います。
ただし、取得価額の合計額が300万円に達するまでが限度となります。
※平成18年4月1日から令和4年3月31日までの間に取得して事業用に使用した場合の適用することができるものでしたが、令和4年度の税制改正によって2年間延長されることが決定されました。(令和6年3月31日まで)
【参考】少額減価償却資産の特例-中小企業庁PDF
※帳簿付けを税込みで行っているか、税抜きで行っているかで判断基準が変わります。ただし、消費税の免税業者から取得する場合、すべて税込みで判断します。
【参考】少額の減価償却資産になるかどうかの例示
■修理や改良などが20万円未満、または3年以内の周期
修繕費になるかどうかの判断基準は、修繕費・改良費などの名目によって判断せず、
その実質によって判定されます。例えば、下記3つは修繕費ではなく資本的支出となります。
・建物の避難階段の取り付けなど、物理的に付け加えた部分の金額
・用途変更のための模様替えなど、改造や改装に直接要した金額
・機械の部分品を特に品質や性能の高いものに取り換えた場合、その取り換えた金額のうち、通常の取り換えの金額を超える部分の金額
ただし、一つの修理や改良などの金額が20万円未満、またはおおむね3年以内の期間を周期として行われる修理、改良などである場合、実績として証明することができれば修繕費とすることができます。
3年以上の周期での修繕でも、1回あたりの設備の修繕が20万円未満なら、修繕費になります。
【参考】修繕費とならないものの判定
■価値の向上ではなく現状維持を!
これまでお伝えした通り、修繕費で費用計上できるか、資本的支出で固定資産になるかの判断基準は、通常の現状維持や原状回復でしかないリフォーム(修繕費)か、
資産価値が上がり、耐久性が高まるか(固定資産に計上後、減価償却)で決まります。
また、用途変更のための工事も、固定資産として計上します。「修繕費」にしたい場合はあくまでも現状維持の範囲内に納めるほうが得策かもしれません。
ただし、ケースによっては修繕費になることがあります。
国税庁によると「従来使用していたものよりも高性能なものに取り換えたり、資産価値が高まったり、耐久性を増した場合は資本的支出に該当する」と記載があります。
しかし、例えば蛍光灯をLEDランプに切り替えた場合は、建物という固定資産そのものの資産価値が高まったと言い切れないことから、修繕費となります。
■あいまいなものはこの基準で判断!
どうしても修繕費か固定資産かの判断が難しいときは、
・かかった費用の合計額が60万円未満
・支出した費用が前期末の取得価格の10%以下
上記のいずれかに該当すれば、修繕費として一括費用計上することができます。
また、定期的な修繕で高額なものには「支出額×30%」または
「前期末の取得価格×10%」のいずれか少ないほうを修繕費とし、残りを全額資本的支出に計上しておけば、修繕費とすることができます。
【参考】修繕費とならないものの判定
今回はリフォーム時に考えておきたい費用のことについてご紹介しました。
ただし、これらはあくまでも、賃貸経営を長く継続して現金を節約する方法です。
節税のためにと言って赤字を増やしすぎると、融資の審査が通りにくいなどの弊害も出てきます。
将来どのように賃貸経営を行っていくかをしっかり考えて軸を作り、
全体のバランスを考えて、判断していくのが良いかと思います。
入居者に長く住んでもらったり、入居希望者に選んでもらえる物件になるように、
税金や補助金制度などを上手く活用して、安定した賃貸経営をしていきましょう 🙂
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