総務省の住宅・土地統計調査によると、2018年の空き家数は848万戸(うち賃貸用の住宅は432万戸)、空き家率は13.6%となっており、年々空き家が増加していることがわかります。
〇総務省の住宅・土地統計調査https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/pdf/kihon_gaiyou.pdf
今後も、人口減少による需要の減少と、新築住宅の供給増加により、空室率は年々高まることが予想され、入居者の獲得はますます難しくなっていくことが予想されます。
全国的には人口減少が続いていますが、実は、地域を絞って細かくデータを見ていくと、少し状況が異なっていることがわかります。
例えば、総務省の住民基本台帳によれば、東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)では2021年1月時点で未だに人口が増加していることがわかります。
また、東京圏以外の地域でも、人口は減少していても、世帯数は増加している場合があります。更に、若年層が増えている地域もあれば、高齢者や外国人が増えている地域もあります。
〇【総計】令和3年住民基本台帳人口・世帯数、令和2年人口動態(市区町村別)https://bit.ly/3s6DDw4
〇過去の人口動態データ
https://bit.ly/3Gl0f0H
このようにマクロとミクロでは状況が異なる場合があり、ひとくくりに空室対策と言ってもどういった入居者をターゲットしているのか、地域の特性や競合物件の有無など、賃貸経営におけるマーケティングの全体像図を踏まえ、マーケティングを行なう上での基礎となる市場や競合を把握(データ分析)することで、導入するべき設備やとるべき対策が変わってきます。
データ分析というと堅苦しい言葉にしり込みをしてしまうオーナー様もおられると思いますので、今回はインターネット上のツールや情報で活用できるツール等をご紹介します。
■賃貸経営におけるマーケティングの全体像
貸経営におけるマーケティングの流れとしては、まず
①「データ分析」・・・市場、競合という観点から現状を正しく捉え未来を予測します。
次に、
②「戦略決定」・・・①のデータ分析を基に、どういう属性の入居者を狙って、自身の物件を訴求するのかというターゲティングを行います。
最後に、
③「空室対策実行」・・・上記のターゲットとニーズと合致する賃料設定・設備導入・大規模改修工事などの具体的な空室対策を実行していきます。
■「データ分析」の基礎①市場分析
まずは、賃貸経営で最も大切な入居者の市場動向を捉えるため、「人口」と「世帯数」を確認します。
「人口」と「世帯数」の推移を時系列で確認するには総務省の統計ダッシュボードを使うのが便利です。
〇統計ダッシュボード
・人口数の数位
https://dashboard.e-stat.go.jp/graph?screenCode=00010
・世帯数の数位
https://dashboard.e-stat.go.jp/graph?screenCode=00400
こちらを使って該当の市区町村を入力すれば、「人口」や「世帯数」が増加傾向にあるのか、減少傾向にあるのかがグラフ形式でわかります。
該当の地域が「人口」も「世帯数」も増加傾向にあれば、当面の間は入居者が決まりやすい状況にあるといえるでしょう。
「人口」は減少しているものの、「世帯数」は増加しているという場合も良くあります。この場合は、「世帯数」の内訳である「家族類型」を確認します。
例えば、「単独世帯」が増えている場合、一人暮らし用の物件であれば入居者が決まりやすいといえるでしょう。
ただし、「単独世帯」と一口にいっても、性別・年齢・国籍・世帯年収など、さまざまな属性があるため、切り口を変えながらデータ分析を行っていく必要があります。
まずは人口の増減と合わせ、世帯数の内訳である家族類型ごとの推移の把握を行いましょう。
■「データ分析」の基礎②競合分析
次に、競合物件の動向を捉えるため、「類似物件数」と「自身の物件の競争力」を確認します。
「類似物件数」は、SUUMO、HOME’Sなどの不動産ポータルサイトを使うのが便利です。
〇SUUMO
https://suumo.jp/
〇HOME’S
https://www.homes.co.jp/
地域、建物種別、賃料、築年数、面積など、自身の物件に近い条件を指定して検索すれば、現在募集中の物件数、つまりライバルとなりうる物件の数を確認できます。
データ分析の最後のステップとして、「自身の物件の競争力」から適正賃料等を確認します。
まず、「平均賃料」は、SUUMOの賃料・設備相場チェッカーを使うのが便利です。こちらで自身の物件の状況と照らして、どれぐらいの差があるのかを確認してみてください。
〇SUUMOの賃料・設備相場チェッカー
https://www.suumo-onr.jp/checker
※こちらは無料会員登録が必要です。
また、このツールを使えば、類似(ライバル)物件の設備や、広さ、間取りなどの詳細をチェックすることもできます。
■まとめ
今回は「賃貸経営におけるマーケティングの全体像とデータ分析の基礎」としてマーケティングを行なう上での基盤となる「データ分析」に焦点を当ててお話をしました。
具体的な空室対策に関しては、これらのデータから得られた物件を取り巻く現状と予測られる未来をもとに対策を検討していく事となります。
仲介・管理会社に物件の管理を一任されているオーナー様も、所有する物件の置かれた状況をデータとして捉えることで、物件のあるべき姿(目標)が明確となり、目標を目指した管理が行えているのか?を判断するきっかけにもなるかと思いますので、一度所有される物件のデータ分析に挑戦されてみてはいかがでしょうか。