年末にオミクロン株が日本国内でも観測され、年明けの今は全国で感染者が日々増加。東京都は上野動物園の閉園を決めました。図書館とスポーツ施設以外の都立施設は原則として閉館するとの事で、またしても経済活動に陰りが見えてきています。
コロナの驚異が世界に広がった事で経済的に困窮している人が増加しました。
以前に「コロナショック!「家賃減額」への対応は?」でも紹介したように、
また同じように賃料の支払いが滞っているところもあるのではないでしょうか。
東京地裁では、双方の合意なしに賃料の半額が約半年の間支払われなかった案件に対し、貸主の主張を全面的に認め、借り主に対する支払い義務を認めました。
本件のポイントは、「合意が取れていない状況」「施設が閉鎖されていたわけではなかった」というところです。
当事者間で合意がある場合はその取り決めに従う事となりますが、合意がない場合でも、テナントが入っている施設が閉鎖または使用が許可されていなかった場合には、テナント側は賃料支払い義務を負わない事になると考えられます。
◆テナントがコロナの影響により営業を休止した場合、賃料は減額されるか否か。◆
1.当事者間であらかじめ合意している場合には、その取り決めによる。
2.別段の合意がない場合
・・・オーナーは賃貸物件の使用を許容しているにも関わらず、テナントが営業を休止している場合には、テナントは賃料支払い義務を免れないものと考える。
・・・オーナーが施設を閉鎖し、テナントが賃貸物件に入れず、全く使用できないような場合には、テナントは賃料支払い義務を負わないことになると考えられる。
賃料支払義務の全てまたは一部が消滅するか否かが争点でしたが、裁判所は、緊急事態宣言及びそれに伴う休業要請は法的な強制力を有するものではなく、引き続き店舗を使用できる状態にあった、という判断に至ったようです。
<<参考>>
民法611条
1.賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
2.賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
民法第536条
1.当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
2.債権者の責に帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
対個人の場合はどうでしょうか。
今までは概ね3ヶ月以上の賃料の不払いであれば、信頼関係の破壊として賃貸借契約の解除を認めてくれる裁判官も多かったのですが、昨今の状況によって判断に変化が生じており、事業者だけでなく一般入居者であっても信頼関係の破壊とは言えないと判断される事もあるようです。
法務省では「賃貸借契約に関する民事上のルール」をWEB上に公開しています。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00050.html
困っている入居者や事業者を助けたいという気持ちの反面、とはいっても自分たちの首が締まるような状況は避けたいですよね。
もし賃借人との信頼関係が築けそうにないようであれば、契約解除に向けて慎重かつスピーディに動いていくしかありません。
まずは、滞納にいち早く気づいて入金がない旨を連絡していくのが大切です。ここで信頼関係が築ける相手なのかどうかを見極めたいところですね。こちらに不備がないよう、丁寧な対応を心がけるとよさそうです。
初期段階での対応の結果、信頼関係を築くのは難しい相手だった場合には、内容証明郵便を使用した督促状を送ったり、場合によっては訴訟も視野に入れた契約解除を通達しなければなりません。
まだまだコロナの収束が見えない今、一度滞納が発生した時のことを想定して、対応フローを作っておくといざという時に焦らなくて済みそうです。その際、どうしても法律が絡んできますので、信頼できる弁護士を見つけておくとより一層安心できそうですね。
ホープハウスではお付き合いのある各種士業の先生方がおりますので、紹介して欲しいなどのご希望がございましたら一度ご相談ください。