賃貸に絡む、日本人・外国人比較調査の実態

コロナ禍の影響で在留外国人数は8年ぶりに減少したと言われていますが、
令和2年6月末現在における中長期在留者数は257万6622人、
特別永住者数は30万9282人で、
これらを合わせた在留外国人数は288万5904人と
多くの方が日本に住まわれていることが分かります。

とはいえ、大家さんとしては、
生活習慣や法制度の違う外国人を相手にすることは
なかなか難しいというのが正直な感想だと思います。

🙁 「家賃滞納リスクが多そう」
😕 「入居後のトラブルが心配」
というマイナスイメージが先行していますが、実際にはどうなんでしょうか?

在留外国人専門の賃貸仲介&総合サービスを提供しているアットハース株式会社は、
これまでに2,500名超の在留外国人の賃貸仲介の実績を元に、
彼らにまつわる実態・調査を定期的に実施。
外国籍契約者の実態を日本人と比較したデータを発表しました。


【賃貸&外国人】にまつわる実態調査をレポートするアットハースレポート
(8/31発表ニュース提供元:PRTIMES、情報提供元:アットハース株式会社

■大家が在留外国人を敬遠する理由TOP3sub1
外国人の民間賃貸住宅入居支援策に関する考察 / 稲葉佳子を参考にすると
やはり一番に挙げられるのは「もしもの時のトラブルを誰が対処してくれるのか」
ただでさえ、トラブルに対する注意はしにくいのに、
日本語以外でどうやって伝えればよいのか、悩みますよね。
2位「家賃滞納・未払いのリスク(61%)」
3位「生活ルール・日常でのトラブルリスク(59%)」となっております。

■比較その1「入居審査通過率」sub2
京大学空間情報科学研究センター「民間賃貸住宅市場における入居審査と家賃滞納」

入居審査率を比較すると、
「在留外国人」は61.4%、「日本人」は83.2%
やはり日本人のほうが高いことが分かります。

入居審査を通過する条件としてポイントとなるのが以下の通りです。
・日本語が話せること
読み書きができないと、契約書を理解してもらえないという判断になります。
最低限、大家さんや不動産屋と意思疎通ができて、
ある程度読み書きが出来るレベルの日本語能力がないと、
部屋を借りることは難しいでしょう。
・家賃の支払い能力があること
仕事に就いていて家賃の支払い能力があるかどうかが最も重要になります。
「就労証明書」や「在職証明書」の提出を求められる場合があります。
・在留資格があること
この資格なしに日本に入国、在留することは不法滞在になります。
・日本人の連帯保証人をつける、もしくは外国人専門の保証会社を利用する
日本人の知り合いや仕事場の人などを連帯保証人とする方もいます。
外国人専門の保証会社ならば、外国人入居者とのコミュニケーションもとれますし
トラブルや契約に関してもサポートしてくれるので安心です。
・会社に借りてもらう(法人契約)
仕事のために日本に来ている場合は、会社名義(法人契約)で部屋を借りてもらい
寮として外国人の方が入居するケースもあります。

今回のレポートを発表したアットハースから仲介する在留外国人の
通過率は約82%と、日本人の審査通過率とほぼ一緒という結果になっています。
要因としては、
①アットハース側でも一次スクリーニング(年収対希望家賃のバランス確認)を実施
②大手日系企業勤務等のお客様が多い
と高属性の外国人入居者の対応をされていることや
サポート体制が整っており、不動産会社や大家さんからの
信頼度も高いことあげられます。

 
では、生活に困窮している層の外国人がトラブルを起こすかというと
実はそうでもないと言われています。
外国人は大家とのトラブルを避ける傾向が強く
トラブルを起こすケースは「知らないでやってしまった」ということがほとんどで
きちんと対応すれば問題は解決することがほとんどだと言われています。
■比較その2「家賃滞滞納率」
sub3
京大学空間情報科学研究センター「民間賃貸住宅市場における入居審査と家賃滞納」
外国籍・日本国籍との間で、家賃滞納・未払い率に対しては、
大きな差はみられません。
在留外国人を敬遠している理由である「家賃滞納・未払いのリスク」
これについてはオーナー側の思い込みが強いとも言えそうです。
外国人という理由だけで断っていた人が
優良入居者となる可能性だってあったのかもしれません。
 
■比較その3「トラブル件数」sub4 
不動産適正取引推進機構「不動産取引・管理に関する実務調査 賃貸住宅管理アンケート」

では実際に起こる「賃貸トラブル」としてはどんなものが多いか。
日本人に関しては「家賃滞納」「敷金の清算」などお金に関することが
トップ3に入る一方で、
在留外国人の家賃滞納については6位に入っており、
実態はそう多くないと言えるのかもしれません。

しかし一方で起こっているのが
日本の生活習慣を知らずに起こしてしまうトラブル。
日本でどのような生活を送らなくてはいけないかということに対する
情報と知識が不足している場合が多いといわれています。

 

👿 トラブルが起こる可能性があるなら、やっぱり外国人は避けたい!
そういう判断をされる気持ちも分かりますが、
価値観の違いが、逆に自物件とフィットする可能性もあるかもしれません。

〇築古物件でもオッケー
新築を好む価値観がなく、家賃やエリアがあれば気にせず住んでくれる方もいます。
DIY文化が根付いている国もあり、DIY可の物件を喜ばれることもあります。
〇3点ユニット、シャワーのみでもオッケー
湯船に浸かる習慣がなく、
3点ユニット、シャワーのみでも抵抗感がない人も多いです。
〇家具・家電付。短期入居でもオッケー
マンスリーや民泊用に家具家電を揃え、短期入居可能にしたお部屋を
求めている外国人もいます。

各市町村では、外国人向けのガイドブックを配布しているところもあります。
また在留外国人の方を紹介してくる仲介会社さんは、
サポートなどもきちんと整えているところが多いです。
もう特別じゃない!外国人入居者との関わり方でも取り上げましたが、
すでに外国人入居者は特別なものではなくなっており、
国を挙げて、受け入れやそのサポートが進んでいます。

🙂 「うちは日本人で満室だし、わざわざ外国人を受け入れる必要はないよ」
という大家さんも、いつか仲介会社から「在留外国人は受け入れていますか?」と
問われる日が来ないとも限りません。

自分ならどう対応するか、一度は考えてみてもよいかもしれませんね。

▼参考にどうぞ▼
外国人の民間賃貸住宅への円滑な入居について(国土交通省)