老朽化マンションの再生促進を目的として、7月に
国土交通省は、古くなったマンションの建て替え促進策を導入すると発表しました。
新たな老朽化マンションの再生促進策(案)について(国土交通省)
これは老朽化マンションの建て替えについて、区分所有者間の合意形成が
進まないことなどを理由に、
老朽化マンションが放置されるという問題を解決する狙いがあります。
去年には「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」の改正法が成立し、
合意形成の条件が緩和、住民の合意を促し、
建て替えや敷地売却がしやすくなるよう、働きかけています。
現在区分マンションを所有している人や、
これから区分マンションを購入するという人は、
ぜひチェックしてほしいこの「老朽マンションの建て替え促進案」について
調べてみました。
■築40年超のマンションが急増傾向!進まぬ新陳代謝
築40年超のマンションは約81万戸存在しますが、
これが2030年には2倍強の約198万戸、2040年には4.5倍の約367万戸となるなど、
10年ごとに倍々で急増することが明らかとなっています。
今後は築年数が相当経過しているにもかかわらず
老朽化対策の不備や管理組合の担い手不足が顕著なマンションも
急増することが確実視されています。
そのため2020年には関連する二つの法案の改正が可決しました。
💡 主な改正ポイント
マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)
1.国による基本方針の策定:
マンション管理の適正化の推進を図るための基本的方針を策定
2.地方自治体によるマンション管理適正化の推進:
①マンション管理適正化推進計画の策定(任意)→③へ
②必要に応じて管理組合に対する指導・助言の実施
③各マンション管理組合が策定した管理計画の認定
「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」(マンション建替え円滑化法)
1.除却の必要性に関する認定対象の拡充:現行の耐震性不足に加えて、
外壁の剝落の危険があるマンション、バリアフリー性能が確保されていない
マンションを追加
2.団地における敷地分割制度の創設:要除却認定を受けた団地において、
敷地共有者の4/5以上の同意によりマンション敷地の分割を可能とする制度を創設
■改正後も建替えは簡単ではない
建替えに同意が得られない理由としては
1.老朽化で問題があっても、部屋に住み続けていない
2.建替えではなく、修繕で対応できないかと考えている
3.建て替えにかかる区分所有者の平均負担額は約1000万円と重く、実現できない
といった理由があります。
特に大きな問題となるのが、3の資金面です。
そこで今年7月、新たに打ち出された促進策が
「建物の階数を増やせる特例」です。
■建替えの資金作りに…促進策の導入
現在、マンションの建て替えに際し、階数を増やせるのは、
1981年以前の旧耐震基準で建設された「耐震不足」の物件に限られています。
国交省は省令・告示の改正により、
「外壁の劣化」「防火体制の不足」「配管設備の劣化」「バリアフリー未対応」
の4要件を新たに加え、いずれか一つに該当すれば
容積率を緩和する特例を受けられるようにする促進策を
年内に導入するよう調整しています。
各要件にも規定があり、
・外壁の劣化▶ひび割れやはがれが一定以上あること
・防火体制の不足▶非常用進入口の未設置 など
・配管設備の劣化▶天井裏の排水管で2か所以上の漏水
・バリアフリー未対応▶3階建て以上の物件でエレベーターがない
各戸玄関の幅が75センチ未満 など
これらはいずれも、建物の規模に応じ、
1級建築士などの有資格者が調査、判断します。
建物の階数を増やせる特例を受けやすくすることで、
増床分を販売できるようにすることで、販売したお金を建替え金に充てることが
想定されています。
住民は引き続き、建て替え後のマンションに住んだり、他人に貸したりできます。
とはいえ、法改正後の内容を見ると、一部の住民の意見を無視する形で
建て替えを決めるケースも想定されます。
古い物件であればあるほど、高齢者が住んでいることが多く、
引っ越しにかかる費用や体力的な負担も考えると、
同意を得ることが難しい場合もあるでしょう。
対象物件、あるいは今後対象物件となる部屋を所有しているオーナーさんは
将来を見据えて、今後の動きを管理組合や物件所有者、入居者と共に
考えていく必要があることを覚えておきましょう。