孤独死…その後の指針に。残置物のモデル条項発表

6月7日、国土交通省から「残置物の処理等に関するモデル契約条項」(ひな形)
策定・発表されました。

若者にも増える孤独死…物件を守るためにできることは?でも取り上げた通り、
長寿化や核家族化の影響で単身世帯が増え、
それにともない孤独死の件数も年々増えています。
また、60歳以下の孤独死も増えており、賃借人の死亡後、
相続人の有無や所在が分からない場合において、
賃貸借契約の解除や残置物の処理が困難になることもあり、
大家さんの悩みの種になっています。

tensai
日本少額短期保険協会「第6回孤独死現状レポート」より転載

7/19日本少額短期保険協会がリリースした「第6回 孤独死現状レポート」を見ると、
原状回復には約39万円かかっているのに対し、
残置物処分費用は約23万円とかなりの負担がかかっていることが分かります。

現在は、相続人がはっきりしない場合でも、第三者である大家さんが
残置物を勝手に処分することはできません。
相続人が見つからない場合は、家庭裁判所に申し立てをして、
相続財産管理人を選任する制度がありますが、お金も時間もかかるため、
その間の残置物の保管や管理・運搬費用も、大きな負担になります。

こうした経緯もあり、特に孤独死が心配される単身高齢者の入居者を避ける
大家さんは少なくありません。

大家さんの不安感を払しょくし、単身高齢者の居住の安定確保を図るため、
国土交通省と法務省では、死後事務委任契約を締結する方法を検討し、
賃借人の死亡後に契約関係および居室内に残された家財(残置物)を
円滑に処理できるよう、
(1)賃貸借契約の解除
(2)残置物の処理
に関する委任契約書のひな形を策定しました。


 💡 残置物の処理等に関するモデル契約条項が公開されていますが、
まずは残置物の処理等に関する契約の活用手引きのリーフレットを見れば、
残置物処理の際、必要な契約内容が理解できるかと思います。
仲介・管理会社とも相談して、入居者・物件に合う契約書を作成していきましょう。

■想定される利用場面
単身高齢者(60歳以上の者)の入居時(賃貸借契約締結時)

■残置物の処理等に有効な契約について

(1)賃貸借契約の解除事務委任に関する契約
▶第1 解除関係事務委任契約のモデル契約条項を参考にしてください。

賃借人の死亡時に賃貸人との合意によって賃貸借契約を解除する代理権を受任者に与えます。
(2)残置物の処理事務の委任に関する契約
▶第2 残置物関係事務委託契約のモデル契約条項を参考にしてください。
〇賃借人の死亡時における残置物の廃棄や指定先への送付等の事務を受任者に委託します。
〇賃借人は「廃棄しない残置物」(相続人等に渡す家財等)を指定するとともに、 その送付先を明らかにします。
〇受任者は、賃借人の死亡から一定期間が経過し、かつ、賃貸借契約が終了した 後に、「廃棄しない残置物」以外のものを廃棄します。ただし、換価することが できる残置物については、換価するように努める必要があります。

■受任者について
入居者やその相続人の利害に大きく影響する契約であるため、
□ 入居者の推定相続人のいずれか
□ 居住支援法人、管理業者等の第三者(推定相続人を受任者とすることが困難な場合)
のいずれかを受任者とすることが望ましいと考えられます。
大家さんは入居者(相続人)と利益相反の関係にあるため、避けることとされています。

現在は、入居者がお亡くなりになった後に
不安感を生じにくい方を想定にしています。
個人の保証人がいる孤独死の心配のない若年層に対して、同じ契約をすると、
民法や消費者契約法に違反し、無効となる可能性があります。

しかし、残置物の問題については、高齢者に関わらず、
若い方や外国人の方など属性に関係なく起こりえる問題です。
引き続き、残置物の取り扱いについては声をあげていきたいところですね 😉