障がい者を理解して賃貸で支援

厚生労働省の2018年度版「障害者白書」によると
身体障がい者は全国に436万人、知的障がい者は108万2000人、
精神障がい者は392万4000人となっています。

3区分の複数の障がいを併せ持つ人もいるため、単純合計にはなりませんが、
国民の7.4%が何らかの障害を持っていると言われています。

全体および在宅・通所の障がい者は増加傾向にあると言います。
その程度はやはり人それぞれであり、
自立した生活、就労のために賃貸住宅での一人暮らしを希望する、
比較的軽度な障がい者も増えています。

一方で障がい者が部屋探しをする場合には、
部屋の設備であったり、受け入れるオーナーさんや不動産会社の理解が乏しく
なかなかスムーズに進まないケースもあります。

住宅セーフティネット制度から見るシェアハウスでもほんの少し取り上げた通り、
住宅セーフティネット制度など国の施策もあり、
これにプラスして、東京ではセーフティネット住宅に新たな補助金も出ています。

東京ささエール住宅(セーフティネット住宅)について新たな補助制度を始めます
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/04/10/01.html

地域での自立を促す流れの中で、
賃貸住宅が受け皿としての社会的役割の重要性も増しています。

今回は軽くになりますが、障がい者を受け入れるうえでどんな準備や用意が必要か。
などを調べてみました。


■本来は障がいを理由に入居を断ることはできない
「障害者差別解消法」により以下が義務付けられています。
・不当な差別的取扱いの禁止
 >障がい者お断りなどの表記をしない、障がいを理由に退去させない等
・合理的配慮の提供
 >障害物の排除、コミュニケーションの配慮、必要に応じて支援者へ連絡等

とはいえ入居後、嫌な思いや不便な思いをさせないためにも、
オーナーとして入居者の体の状態や支援状況などを確認して、
「うちの物件では受け入れは難しい 😕 」ということが分かれば、
それを伝えてあげることが望ましいでしょう。

■障がい別によって違う物件への課題
一言に「障がい」と言っても、その内容・程度は人それぞれです。
理想は健常者も障がい者も、シニアの方も暮らせる「バリアフリー」賃貸ですが
なかなか難しい部分もあります。
・身体障がい
ハード面が問題。お部屋だけでなく、エントランスの段差等から障がいになり、
スロープを設置してもらうという流れにもなりにくいようです。
車いすも住宅を傷めるのでということで、拒否される場合もあります。

一方で、一般の場合は不利となるような物件でも需要に合う場合もあります。
脳性まひで伝い歩きするひとなど、障がいの種類によっては
部屋が狭い方がいいこともあります。
浴槽での入浴が困難な場合は、シャワールームだけあればいいという方もいます。

聴覚障がい、知覚障がいの場合はハード面では大きな配慮はいりません。
知覚障がいの方は、IH対応のお部屋だと安心です。
ただ地震や火事などの緊急時にすぐに行動できない場合はあるので、
近隣の方にお知らせしてあげることが必要になるでしょう。

また、DIY可能なお部屋にしてあげると、
それぞれの障がいに合わせて器具が設置できるのでありがたいようです。
聴覚障がいはインターホンが聞こえないので、別付で光が灯るスイッチを付けたり、
車いすでも使いやすい位置に棚をセットしたりなど
暮らしやすいお部屋をそれぞれ作ることができれば、長期入居にもつながります。

・知的障害・精神障害
症状は人の数だけあるので、親族やケアマネなどを交えて話を聞くと良いです。
お金の管理が難しい人も多いので、
家賃に関しては支払い方法を相談して、代理納付も視野に入れると良いでしょう。
また言動や行動が激しい場合もあるので、壁が厚い、
騒音対策の取れている部屋だと助かります。
部屋の片づけなどの家事、時間を守るといったことが苦手ですが、
マイペースにこなし、一人暮らしをきちんとされている方もいます。

「 😕 ほかの入居者の迷惑になるから…」と断る人もいますが、
一度どういう方なのか話を聞いてから、決めることが良いでしょう。 

■グループホームという選択
空室が多い、空き家がある方はグループホームという選択肢もあります。
グループホームとは、専門スタッフのケアを受けながら
共同生活を送る小規模な施設。
最近は空き家を改修し、グループホームとして借り上げる企業も増えています。

親元を離れて生活したい、保護者の高齢化や死去を機に入居したいという
ニーズがあり、全国的にも数が足りていないのが現状です。

賃貸アパートに比べて、空室や家賃減額、管理の手間と言った不安がなく、
また社会貢献性が高いと、注目を浴びています。

 

障がいを抱える人は、支援や関わり次第で、生活基盤の中で力を発揮し、
就労・生活を送ることができます。
「住まい」は大きな役割を果たすことができるのです。
障がいのある方が自物件に興味を持ってくれたら…
空室・空き家対策を考えていたら…
是非一度、障がいを抱える方を住まいで支援することも考えてみてください。