7/10から開始!自筆証書遺言の保管制度

「遺言書を書く」と聞くと、
「 😥 なにか病気になったの?」
「 😕 家族に言えないことがあるの?」
と色々探りを入れられるかもしれませんが、
大家さんは周りの方よりも遺された家族に伝えることはとても多く、
できれば、ライフイベントの変化や節目節目で書いていった方が良いと思います。

30代であっても、還暦を迎えても、その人その人に
大切なものがあり、意思表示として残したいと思う事があるはずです。

令和2年7月10日から法務省において自筆証書遺言の保管制度が始まりました。
是非この機会に、「遺言書」について考えてみましょう。


「自筆証書遺言書保管制度」とは、法務局(遺言書保管所)において、
自筆証書遺言書の原本を保管し、画像をデータ化する制度です。
相続人等は、遺言者の死亡後、法務局において、
遺言書が預けられているか否かを確認し、
その内容について証明等をしてもらうことができるようになります。

これまで自筆証書遺言書は、自宅の仏壇や金庫などで
個人で保管するしかありませんでした。
これでは、隠匿・改ざん等が行われるおそれがあり、
また、遺言書の存在も不明であることもあり、
相続をめぐる紛争が起こるというのは珍しい話ではありません。

そうした争いを避けるためにも、
今回の制度は有効です。
 
遺言書の保管制度を利用すれば、
遺族が遺言書が存在するのか否か把握することが容易になり、
また、遺言書の紛失や隠匿、改ざん等を防止することができます。

また法務局から発行される遺言書情報証明書は、
相続登記や金融機関などにおける各種手続きに利用することができます。
なおかつ裁判所による検認手続きが不要となり、手間が減ります。

法務局における自筆証書遺言書保管制度について(法務省)http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

■ 法務局(遺言書保管所)へ自筆証書遺言書を預ける時の手順
①自筆証書遺言書を作成する。
法務局に預けることができるのは、自筆証書遺言書のみです。
保管制度が開始される前に作成された遺言書でも、
所定の様式に合うものであれば、保管申請することが可能です。

②保管する法務局を決める。
遺言書を預けることができるのは、
遺言書の住所地、本籍地、所有する不動産の所在地のいずれかの法務局です。

③申請書を作成する。
申請書は、法務局の窓口に備え付けられています。
また、法務省のホームページからダウンロードすることもできます。
予め、作成した上で、持参してください。

④保管申請の予約をする。
即日処理されるため、
各種申請・請求にあたっては原則予約が必要です。

⑤保管の申請をする。
遺言者本人が出頭する必要があり、病気等のため、遺言者本人が法務局に
出頭できない場合には、保管制度を利用することができません。
<ただし介助の方を同伴させることはできます。>
申請には以下のものをお持ちください。
・遺言書
・申請書(③で用意したものをお持ちください)
・添付書類 本籍地の記載のある住民票の写し等(発行3ヶ月以内のもの)
・本人確認書類 マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなどいずれか1点
・手数料 1通につき3900円(令和2年7月時点。収入印紙を納付用紙に貼付)。
 なお、保管期間に関係なく、定額です。

⑥保管証を受け取る
保管証の再発行はできませんので、しっかり保管しましょう。
例えその保管証があっても、本人が亡くなるまでは、
本人以外は遺言書を引き出すことはできません。
もしもの時、預けている遺言書の内容をスムーズに伝えるために
遺言書を法務局に預けておくことをご家族にお伝えした方が良いでしょう。
その際、保管証を利用すると便利です。

■遺言書の様式について
かなり細かく指定されているので、ホームページなどでしっかり
作り方を確認して作成しましょう。
・遺言書は財産目録以外は全て自書する必要があります。
・財産目録は、パソコンで作成したものでも構いませんが、
 すべてのページに署名・押印が必要になります。
 通帳のコピーや登記事項証明書を添付する形でも大丈夫です。
・遺言書を作成した年月日を記載する必要があります。
・署名押印する必要があります。押印は実印ではなく、認印でも構いませんが、
スタンプ印は避けてください。
・遺言書本文・財産目録には、各ページに通し番号で、
ページ数を自書してください。
・用紙はA4サイズを使用してください。
・ホチキス留めや封入はしないでください。封筒は不要です。

法務省では遺言書の内容について審査はしません。
また内容についても質問・相談には応じてくれませんので、
心配事があれば、あらかじめ弁護士等に相談しましょう。

■遺言所の保管の閲覧・撤回
遺言者本人は、預けた遺言書の内容を見る(閲覧する)ことができます。
遺言書原本の閲覧は、原本を保管している法務局でのみすることができますが、
モニターによる閲覧は、全国のどの法務局でも可能です。
また、法務局に預けている遺言書を返してもらう(撤回)することもできます。
ただし、遺言書の保管の撤回は、法務局に遺言書を預けることをやめることであり、保管を撤回したからといって、遺言書が無効になるわけではありません。

■相続人の手続き
遺言者が死亡した後
相続人は遺言書が保管されているかの確認や遺言書の閲覧、
内容証明書の交付請求をすることができます。
①請求は、全国どの法務局でも行うことができます。
原本の閲覧は、遺言書の原本が保管されている法務局でのみ閲覧可能です。
②請求ができるのは、相続人、遺言執行者、受遺者等です。
これらの者の親権者や法定相続人も請求することができます。
③法務局で行う全ての手続きには、予め予約が必要です。

請求には、遺言者の死亡を確認できる戸籍謄本等、必要書類がありますので、
ホームページ等をご確認ください。

なお、相続人の一人が遺言書の証明書を交付したり、
遺言書を閲覧をした場合には、法務局から、他の相続人に対し、
遺言書が保管されていることの通知がなされます。

 

もちろん、必ず法務局へ遺言書を保管する必要はありませんが、
比較的気軽に、自分の意思をしっかり伝えることができる制度なので、
ぜひ一度、活用を検討してみてはいかがでしょうか?