台風は例年30個発生し、そのルートも大きく外れることはありませんでした。
しかし2018年に西日本豪雨と台風21号、19年の台風15号、19号は
今まで大きな被害がなかった地域にも甚大な被害をもたらしました。
このような自然災害による家屋の損害は
総合型の火災保険により担保されることはご存知かと思います。
損害保険業界が支払った自然災害(自身を除く)による保険金は
18年だけでも約1兆6000億円。
しかし、これは火災保険で支払われたものだけの数字で、
実際には保険金の支払い対象にならなかった被害もあります。
今回はどんなケースなら保険金が支払われ、またどんなケースなら支払われないか。
今後どうすれば、突然の被害にも対応できるか考えてみます。
■火災保険の主契約と特約
賃貸物件専用の火災保険商品は少ないので、
物件の特徴やオーナーさんの希望に合わせ、
基本補償項目から特定の補償を除外したり、
必要な追加補償項目を追加するなど、作り上げなくてはいけません。
・基本補償項目(主契約) ※の項目は除外可能
火災、落雷、破裂・爆発、風災、ひょう災、雪災、水災(※)、
盗難(※)、建物外部からの物体の飛来・落下・衝突、
給排水設備の不備による水濡れ損害(※)、
破損・汚損等の損害(※)
・追加補償項目(特約)
特約は基本補償にプラスアルファで補償を充実させるものと、
火災や住宅に関係ない日常生活補償に関するものもあります。
■見逃しがちな「水災」の重要性
19年日本列島を襲った台風15号と19号はそれぞれ
「風の台風」「雨の台風」というところで被害状況が異なりました。
火災保険において「風災」はほぼすべての火災保険商品で
標準担保となっているため、街路樹や鉄塔の倒壊による
家屋の損壊などは多くの場合、火災保険で補償できます。
一方「水災」はオプションであることが多いため、
補償の付帯漏れにより、被害を保証できなかった事例が起こってしまいました。
河川の氾濫や下水道のオーバーフローによる浸水などにより
今まで被害のなかったような場所でも
浸水や全半壊などの損壊被害が発生しました。
また、保険のタイプによって補償される範囲が異なります。
一般的に水害の場合の補償範囲は、保険金額の30%以上の損害が発生した場合、
または床上浸水(または地盤面から45cm超)が発生した場合に限られています。
一番手間のかかる床下浸水の除去には保険の適用がされないという保険が
ほとんどなので、災害時には浸水防止や下水道からの逆流防止などの
対策を講じる必要があります。
ハザードマップなどを確認して、被害を受けそうな地域はもちろん、
もしもの時に備えて、改めて火災保険を見直していただきたいです。
■火災保険で支払われる付随費用
家屋の復旧など被害を受けた物件自体だけでなく
・被害を広げないための仮復旧作業
・損害の調査費
・がれきの撤去や処分費用
・残存物の撤去費用
・清掃費用 など
一定の割合を限度として支払われる可能性があるので、
ぜひ活用していきましょう。
■雨漏り、吹き込み・染み込み等の場合
台風被害で意外と多い「雨漏り」「吹き込み・染み込み」。
これらはサッシのすき間や老朽化した屋根、壁のすき間
屋上防水の劣化箇所などから発生した事故性の認められない被害なので
火災保険約款では、免責とされています。
ただし、強風によって屋根などが破損し、
そこから生じた雨漏りなどは「風災」と処理され、保険金が支払われます。
■近隣民家や車両に被害が出てしまった場合
台風により、破損した物件の屋根やひさし、アンテナなどが飛び、
近隣民家や車両に被害を与える事故もあります。
実はこうした加害事故は物件をきちんと使用・維持・管理していれば
法律上賠償責任は発生しません。
また
■物件が被災し、入居者が居住困難になった場合
以上も、復旧までの宿泊費などを家主が負担する義務はなく、
法律上賠償責任は発生しません。
とはいえ、被害を受けた人との関係性もあるので、
責任は自分にあるのだと思い込みすぎず、
お互いが納得する形で交渉することが必要です。
前述の通り、居住が困難になった物件では
当然家賃を回収することはできなくなります。
このような場合には家賃損失に備えて
「家賃補償保険」または「家賃保証特約」を
上乗せ補償として契約しておくべきでしょう。
災害は避けられないもので、どうしても損失も出てしまいます。
しかし、このことが原因ですべてを失うことは、
きちんと備えていれば、避けることができます。
現在加入している火災保険も見直しつつ、
必要な補償をしっかりと契約しておきましょう。