<相続法改正>知っておきたい「相続法改正」のポイント

<相続法改正>不動産が招く相続トラブルでもお話させていただきましたが、
2019年、7月1日、大規模な改正となった民法の相続法部分が施行されました。

家主様にも大きくかかわってくる改正の概要を今回はお伝えします。


相続法改正は大きく分けると以下の6つに分類します。
①配偶者の居住権を保護するための方策(4/1より施行)
配偶者が相続財産である建物に居住していた場合、
その配偶者の生活の基盤を守るため、新しく2つの権利が創設されました。
■配偶者短期居住権
存命の配偶者が相続開始時に相続財産である建物に居住していた場合、
遺産分割終了までの間、無償でその居住建物を使用できる。
■配偶者居住権
配偶者の居住建物を対象として、
原則として終身配偶者にその使用を求める法定の権利。
遺産分割協議、遺言により設定ができる。

配偶者居住権は原則として
・被相続人が所有した建物に配偶者が居住している
・配偶者以外の者と共用になっていない ことが条件になります。

配偶者にとってはメリットの大きい制度ですが、
所有権を相続した場合と異なり、居住権を売却することはできません。
また修繕費などの必要費についても、所有者と調整しなければいけないなど、
デメリットもあるので、注意が必要です。

②遺産分割に関する見直し等
■遺産分割前の預貯金の払戻し制度
預貯金についての遺産分割の成立前に一定額の払い戻しができる。

相続人は遺産に属する預貯金の内、相続開始時の残高の三分の一に
各相続人の法定相続人の法定相続分を乗じた額については
金融機関に対し、単独で払い戻しを求めることができます。
ただし、その額は預貯金のある金融機関ごとに150万円が限度となっています。

③遺言制度に関する見直し
■自筆証書遺言の作成について
財産目録を自書によらず作成することが可能。
PCを使って、管理・作成することが容易に。

ただし、財産目録の全てのページに遺言者の自書による署名と押印が必要になるなど
形式的な要件はクリアする必要があります。

■自筆証書遺言の保管制度
遺言書を法務大臣の指定を受けた法務局で保管することができる。

紛失や相続人による隠匿など、効力が発揮できないこともあった遺言書。
遺言者本人が法務局の窓口で手続きをすれば、
遺言書を預かってもらうことができるようになりました。
保管された遺言書は検認の手続きが不要になるため、
受贈者、相続人の負担が減りました。

■遺言執行人についての改正
・遺言執行の妨害禁止を請求することができる
など遺言執行人の権限を強める改正や
・相続人に対する遺言内容・遺産内容の通知義務
など遺言執行人に課せられた義務が増えている部分もある。

また遺言執行者を第三者に委託することが容易になりました。
ただし、遺言執行者の権利義務については
規定追加の2019年7月1日よりも前に作成された遺言には適用できません。
ただし、遺言執行者の就任日がそれ以降であれば、適用されます。

④遺留分制度に関する見直し
■生前贈与の範囲についての改正
相続人の贈与については、相続開始前の10年間に限り
遺留分を算定するための財産の価額に算入される。
ただし、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知っていて
贈与した場合は、これまでと同様遺留分の対象とならない。

これまでは、期限の際限なくさかのぼって、遺留分の対象となっていましたが、
それが大きく変わりましたので、改めてチェックをしておいてください。

⑤相続の効力等に関する見直し
相続財産の取得方法に関わらず、法定相続分を超える権利を相続した者は、
法定相続分を超える部分について第三者に対抗(権利を主張)するには、
・登記
・登録
などの対抗要件が必要になる。

遺言で取得しようが遺産分割協議で取得しようが、
不動産であれば登記、預貯金であれば名義変更等を行わなければ、
債権者等の第三者に対抗できなくなります。

例えば、遺言がある場合でも、早期に登記を備える手続きを行わないと、
相続人の一部が自らの相続登記をして第三者に売却してしまうなどした場合には
対抗できないことになるので、相続開始後早期に手続をする必要があります。

⑥相続人以外の貢献を考慮する方策
相続人以外の被相続人の親族(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)が
被相続人の療養看護等を行った場合、一定の要件のもとで相続人に対しても
金銭(特別寄与料)を請求することが認められることとなりました。
例えば
・無償の療養看護、介護
・無償の不動産などの財産管理、事業のサポート
・被相続人の財産の維持、または増加に貢献
などを行った親族については認められることになります。

特別寄与料の金額と請求は、原則として当事者間での協議で決まります。
協議で解決できない場合は家庭裁判所に決定してもらうことができます。
ただし、・相続開始(亡くなったとき)と相続人が誰かを知ったときから6ヶ月以上
あるいは・相続開始から1年以上経過した場合、
家庭裁判所に決定してもらうことはできません。

家庭裁判所に決定してもらう場合には、証拠を提出したほうが確実です。
介護日記、関連する出費のレシート、被相続人とのメールなどのやり取りや
お礼の手紙などもあればしっかり保管しておきましょう。

 

約40年ぶりに改正されたとあって、
内容としては現代の人々に寄り添った形になっています。
自分の相続だけでなく、親や親族の相続についても
これを機会に見直してみてはいかがでしょうか?