家賃債務保証の実態と注意点

前回もご紹介致しました、2020年4月1日から施行される改正民法。
それによって、「連帯保証人の保護」に関する改正により、家賃債務保証の利用増加が予想されます。
今回は、法改正の背景を含め保証の仕組みや取引する際の注意点について、より詳しくご紹介致します 😆


◆連帯保証人保護の極度額が逆に尻込みさせる要因に
一般的に「連帯保証人といえば、青天井の保証義務を負う怖い存在」というイメージではないでしょうか。
実際に保証人の財産差し押さえや破産するといった例も少なくはありません。
こうした事態を防ぐため、今回の民法改正で、個人が連帯保証人になる場合は保証の上限を示す【極度額】の設定が義務化されました。
「連帯保証人を保護する改正」でリスクは軽くなるが、なぜ成り手が減るのでしょうか 🙄
「これまでの賃貸借契約書には、保証の範囲が記載されないために、いくら請求されるかは頭になく、保証する意識が薄いまま引き受けていたケースがほとんどです。
新ルールで、家賃の数年分、何百万円という金額が明示されると『そんなに払えない』と腰が引けてしまうと見られています。
その結果、法人である家賃債務保証会社(以下、保証会社)が連帯保証人の肩代わりをする「機関保証」が増えるというわけです。
賃貸借契約にかかる連帯保証の形態はすでに約8割は機関保証です。人間関係の希薄化や、高齢の保証人の支払い能力に不安を持つオーナーさんの増加も背景にあります。民法改正で機関保証の利用がさらに加速し、地域によっては100%ちかくになると予想されています。

◆機関保証は2種類。いずれも保証内容の把握が大切
滞納が発生すると、保証会社がオーナーさんに滞納家賃を支払った後、入居者に督促して未払い家賃の改修を行う仕組みです。保証料は入居者が一般的で、オーナーさんや管理会社は経費をかけずに滞納リスクと督促手間を軽減できます。さらに、機関保証には「一般保証型」「支払い委託型」があります。
「一般保証型」 ➡ 滞納した場合のみ発生し、オーナーさんや管理会社が滞納を自ら確認して保証会社に代位弁済の請求をする方式。
「支払い委託型」 ➡ 家賃が保証会社の口座に入り、滞納の有無にかかわらず、保証会社が家賃を全額立て替えてオーナーさんに支払う方式。

保証対象者は保証会社によって異なり、滞納家賃が基本だが、原状回復費用、控訴費用が含まれるケースもあり、入居者が亡くなった場合の残置物処理費などがあります。保証料の設定も様々です。「初回費用+更新料」のパターンが中心で、初回は家賃の30~100%、その後1年ごとに1~2万円と幅が大きくなります。「初回家賃の50%+1年ごと1万円」のケースが多いですが、「初回2万円、更新後は家賃の1%を毎月」「初回契約時のみ」などのバリエーションもあります。
 💡 管理会社に契約義務を任せている場合でも、オーナーさん自身が保証会社と契約を結ぶ当事者になるので、契約書の内容を読み込み、保証内容、滞納発生時の手続きなどを把握しておくことが大切です。
無題

◆オーナーさんは会社を選べない?契約における注意点とは
オーナーさんのメリットが大きい機関保証ですが、オーナーさんは「保証会社を選べない」「直接契約できない」という声も聞きます。まず、保証会社は、借主と接点の多い元付の管理会社、客付けの仲介会社と代理店契約を結ぶなどして提携しており、オーナーさんと直接的な取引はしないケースが多くあります。管理会社や仲介会社側から見ると、損害保険の代理店になるのと同様に、保証契約を取ればマージンが入るので、極力一本化したいところです。そこで手続きも慣れた保証会社を使ったほうがスムーズに行くということなのです。こうした理由から、ほとんどの場合、オーナーさんは管理会社の指定する保証会社以外を選べません。ただ、今後利用が増えれば、公平性を図り選べるようになる可能性もあります。
21

【自主管理オーナーさんの場合】 ➡ 空室が出たときに複数の仲介会社に客付けを依頼して幅広く集客します。そこから入居者を決めた仲介会社が提携している保証会社と契約するように促されるケースが多いでしょう。そのため、自主管理オーナーさんは保証会社を直接選んで契約できないことが一般的だといいます。
💡 数は少ないが自主管理オーナーさん向けの保証サービスを展開している保証会社もあります。また、自主管理でも資産管理法人を作っていれば、代理店契約できるケースもあります。

しかし、自主管理オーナーさんが一般保証型で複数の保証会社と契約している場合は、面倒な点も!!
➡ 「滞納が発生して保証会社に代位弁済を請求するまでの告知期限が定められており、最短1週間程度~1・2ヶ月までとまちまち!うっかり期限を過ぎれば保証されない事態も 😥 
保証会社の数が多いほど手続きが煩雑になります。」
💡 こういった点が不安な場合、支払い委託型を選べば解消されます。

◆保証会社をどう選ぶか信頼できる会社の見極め方
保証料が低い保証会社の方が入居者はつきやすいと考えがちだが、金額大小で決めるのはおすすめできません。保証料が低く、審査が甘い会社は「滞納に対する代位弁済額を減らすために強引な督促をしたり、短期間で立ち退きを迫ったりするケースが少なくない」という指摘もあります。 
また、同じようなサービス内容でも、中身が大きく異なることもあります。
例えば、原状回復費用だけでも、金額の上限が家賃の2ヶ月以内など短いケースもあれば、24ヶ月まで大丈夫という会社もあります。中身をじっくり比較するのも大事です 🙂
信頼できる会社を見極める一つの指標に国交省の「家賃債務保証業者登録制度」が挙げられます。これは、2010年前後に保証会社が相次いで倒産した教訓を踏まえ、保証業務の適正な運営と賃借人や家主の利益保護のために2017年から始まった制度です。
財務状況の定期報告などの基準を設け、違反した場合に指導、勧告を行います。
機関保証の仕組みをつかみ、積極的に活用してはいかがでしょうか。
ぜひ、ご参考までに 😆