<相続法改正>不動産が招く相続トラブル

相続法の改正が2019年1月から段階的に施行されています。
相続に関するルールが大きく変わってきているのです。

主な改正の理由は
■被相続人の死亡により残された配偶者の生活への配慮等
■遺言の利用を促進し,相続をめぐる紛争を防止するため
ほか、預貯金の払い戻し、遺留分制度の見直し、特別の寄与など
今の時代に合った法律に変わりつつあります。

今のうちに動いていれば、知っていれば、
いざという時のトラブルを防ぐことができます。
賃貸不動産に関係する相続法の改正と実際のトラブル事例をお教えします。


★そもそも遺言とは★
自分が死亡したときに財産をどのように分配するか等について、
自己の最終
意思を明らかにするものです。
遺言がないと相続人に対して財産が承継されることになりますが、
遺言の中で
日頃からお世話になった方に一定の財産を与える旨を書いておけば
相続人以外の方に対しても財産を取得させることができます。(遺贈)
相続人同士のトラブルを防ぐことができますし、家族の在り方が多様化する中で
遺言が果たす役割はますます重要になってきています。

また遺言の方式には以下のものがあります。
■自筆証書遺言
軽易な方式の遺言であり,自書能力さえ備わっていれば
いつでも自らの意思に従って作成ができる。
今回の改正で
法務局における保管制度も創設され利用しやすくなります。
■公正証書遺言
公正証書遺言は法律専門家である公証人の関与の下で、
2人以上の証人が立ち会
うなど厳格な方式に従って作成され
公証人がその原本を厳重に保管するという信頼
性の高い制度です。
遺言者は遺言の内容について公証人の助言を受けながら
最善の遺言を作成することができます。

😕 認知症だった父の遺言書が無効だと主張されています
遺言をめぐるトラブルとして「父はそんなこと言わない!」として
偽造や認知症で本人の意思がないままに遺言書が作成された、と
主張されることがあります。
・公証人をきちんと立て、遺言書を作成する
・会話を録音しておく
・医師のカルテや認知症の度合いのテストをしておく
など、証拠をあらかじめ用意しておかなければいけません。
とはいえ、64歳から5年ごとにどんどん有病率が高まる認知症。
早めに対応を考えておくべきでしょう。

 💡 自筆証書遺言の方式緩和(2019年1月13日(日)施行)
自筆証書遺言についても、
財産目録については手書きで作成する必要がなくなります。
財産目録には署名押印が必要ですが、偽造も防止できます。

 

 🙁  父が子どもたちに話していた遺言と実際の遺言内容が違う
遺言は何度でもやり直すことができて、最後の遺言が有効となります。
遺言を残す側も「今この話をしたら、関係が悪化するかも…」と不安になり
相手に都合のいい事ばかりを話してしまう可能性もあります。
変更を説明できないままに亡くなる場合もあります。
不確定なことがあるなら、遺言を大っぴらにするのは避けたほうが良いでしょう。

 💡 法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設(2020年7月10日(金)施行)
作成した本人が法務局(遺言保管所)に行って、
遺言書の保管を申請することができます。
遺言者の死亡後に相続人や受遺者らは、全国にある遺言書保管所において
遺言書が保管されているかどうかを調べる、写しの交付を請求、
保管している遺言書保管所において遺言書を閲覧することもできます。
遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付がされると、
遺言書保管官は他の相続人等に対しても、遺言書を保管している旨を通知します。

 

 👿 不動産を兄弟3人で共有していたが、弟が持ち分を第三者に売却した
持ち分の一部が第三者に売却されると、
不動産の管理、処分なども第三者との協力が必要になってしまいます。
不動産を同じ持ち分で分けるのは一見平等に見えますが、
トラブルを避けるためには、共用はやめたほうが良いでしょう。

💡 遺留分制度の見直し(2019年7月1日(月)施行)
不動産の単独所有などで、遺産が公平に分配されなかった場合、
評価額を参考に、不動産を相続できなかった相続人は、
相続した者に対し、金額の請求をすることができます。
遺留分を侵害された者は、遺贈や贈与を受けた者に対し
 遺留分侵害額に相当する金銭の請求をすることができるようになります。
遺贈や贈与を受けた者が金銭を直ちに準備することができない場合には、
 裁判所に対して、支払期限の猶予を求めることができます。
 ➡ 今回の改正で相続分を超える部分の承継については、登記が対抗策となります。
相続した不動産は、亡くなった方の名義から必ず、変更しておきましょう。

 

 😥 夫に先立たれ、ずっと夫の父を介護。
夫の父も亡くなったが、相続財産がもらえないと言われた
相続人としての権利を持つのは、被相続人の一親等に当たる親族です。
「配偶者の親の面倒を見ていて、感謝もされていたのに相続権が発生しない…」
涙をのむという話がよくあります。
遺言書の作成はもちろん、今回新しく施工された方策も活用しましょう。

💡 特別の寄与の制度の創設(2019年7月1日(月)施行)
相続人以外の被相続人の親族が無償で被相続人の療養看護等を行った場合には、
相続人に対して金銭の請求をすることができるようになります。

 

 

このほかにも、遺産を相続できない人も、相続した人も損をしないように
さまざまな円満相続につながる方策が施行されています。
詳細は法務省 http://www.moj.go.jp/ ほか相談窓口へお問い合わせ下さい。

■遺言・相続等に関する法制度や相談窓口についての問合せ
日本司法支援センター(法テラス)
https://www.houterasu.or.jp/
公正証書遺言についての問合せ
日本公証人連合会
http://www.koshonin.gr.jp