他人の土地を売り飛ばす「地面師」

「地面師」という人たちを知っていますか?
地面師とは、土地の所有者になりすまして売却をもちかけ、
多額の代金をだまし取る詐欺行為を行う人たちです。

近年では東京・五反田の老舗旅館を巡り、
積水ハウスが55億円をだまし取られた事件が大きく報道されました。

土地が高騰し、リターンが大きかったバブル期以降、
沈静化していた地面師が今、動きやすい世になっていると言います。

なぜこの時代に数々の名企業、司法書士までだまされてしまうのか。
調べてみました。


地面師が暗躍しやすくなっている理由としては
・2020年の東京五輪を前に、不動産取引に関心を示す個人や企業が増えていること
そして、
・デジタル技術の急速な進歩で、免許証をはじめ身分証明によく使われる書類の偽造精度が非常に高くなっていること があげられます。

積水ハウスの件を見てみると、
舞台となったのは、東京都品川区にある約2千平方メートルの土地。
周囲にビルやマンションが立ち並び、多くの企業が注目する場所だったそうです。
詐欺グループは所有者の女性になりすまし、偽造したパスポートなどを見せながら、
契約し、実に55億ものお金をだまし取ったそうです。

偽造したパスポートはブラックライトで照らせば、
偽造防止の蛍光色が浮かび上がるほど精巧にできていたといいます。

実印ですら、今は3Dプリンタで作れてしまう時代です 😥 

■地面師が狙う不動産の条件
地面師は「嘘がばれにくい不動産」をねらってきます。
例えば…
・更地、空き家になっていて、近隣の人にも知らないと言われる
所有者が現地に住んでおらず、取引相手が事前調査で訪れても
本当の所有者の特定が難しく、近隣に知り合いがいる可能性も低い
・同じ所有者が古くからずっと所有し、物権変動がない
登記上の所有者が高齢だったり、亡くなったりしているケースもあり、
偽の所有者を騙りやすい
・担保権が設定されていない
売却の手続き時に抵当権などの抹消手続きが不要で、
契約途中で不正がバレにくい

・取得後、間もない物件
転売目的で購入→売却が繰り返されていると、
問題があっても、表面化しにくい
・売主代理人がいる物件
通常、決算当日まで、売主本人と会わないため
だましやすい。

買い手側もサラリーマン大家のような
初めて土地やマンションをするような人の
購入意欲が高まっているので、うまい話に飛びつく方がいるのも事実です。
 🙂 「売主は事情が合って、至急売りたい!」
😐 「別の買い手からも話をいただいていて、そちらはぜひ買いたいと言っている」
など結論を急がせ、調査に時間が欠けられない、土地の権利書がないなどの
不備や不安がある取引を持ち掛けられることもあります。

■不動産登記法の大改正で生まれた『本人確認情報提供制度』が悪用されている!
資格者代理人、つまり弁護士や司法書士が所有者の本人確認情報を作成して
法務局に提出することで、権利書がなくても、あるときと
同様の手続で登記できるようになりました。
これにより、本人が権利書を紛失していても所有権移転などの登記がスムーズに
できるようになった反面、
地面師が本人になりすますために利用するケースも増えているのです。

さらに偽造した書類や実印などを使って手続をすれば、
登記を本来の所有者から地面師に変更することも不可能ではありません。

💡 土地を持っている人が気を付けるべきこと
・法務局から身に覚えのない「本人限定受取郵便」がきたら放置しない!
誰かが所有者になりすまし「所有権移転登記」を申請した場合、
法務局から事前通知がきます。
どんな経緯でこの通知がきたのか、しっかり確認しましょう。

・家族、親族、相続人となるであろう人たちにも土地の情報を共有する
本当は家族に残したい土地でも、その存在を家族が知らなければ、
見知らぬ誰かに悪用される可能性があります。
一族全員と共有しなくてもよいですが、
このGWを利用して、一度一緒に、土地巡りがてらおでかけしても
いいかもしれません。

・たまには現地に行ってみる
放置している…という空き家、土地がある人はこの機会に
一度、実際に現地でどんな状態になっているか確認したほうが良いでしょう。
またさらに心配なら、登記簿を年に一、二回確認すると安心です。

💡 土地を買う人が気を付けるべきこと
・どんなにおいしい話でも、しっかり調査してから考える
地面師はバレることを前提に、得たお金を使い込んだり、
国外へ逃亡したりするケースが多く、お金を取り返すことはとても困難です。
大金を失うリスクを考えれば、どんな契約も急ぎすぎることはないと思います。

・証明書の偽造をあらゆる角度から見破っていく。
基本情報に間違いはないか、書類に透かしが入っているか、
書類のコピーをとったらコピーした側に「複写」の文字が浮かび上がるか、
紙質・色・全体に違和感がないかは最低限チェックしましょう。

・相手方だけの話を聞いて、うのみにしない
取引の際は担当の弁護士や司法書士にもアドバイスを扇いでください。
ただ、弁護士や司法書士も万能ではありません。
取引相手や担当の言葉に、何か変だと思うことがあったら、
遠慮せずにそのことを告げて見ましょう。
相手側の用意した人だけの意見を丸のみせず、
自分でも信用のできる人を見つけて、頼ってください。

 

地面師や詐欺師は、複数人でグループを作り、総出で被害者をだまします。
ひとりで対抗していくのは、あまりに無謀です。
家族・弁護士や司法書士等専門家・大家仲間や信頼のできる友人など、
いざという時相談できる人を、一人でも多く、作っていってください。