住宅セーフティネット制度から見るシェアハウス

いわゆる「かぼちゃの馬車」の投資トラブル。
「シェアハウスってなんだかややこしそう 😕 」
拒否反応を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、
今回の問題は運営するサブリース会社と
組織的な改ざんをしている銀行の問題であり、
シェアハウスは、今後も広く普及していく賃貸スタイルです。

今回は住宅セーフティネット制度の活用が期待されている
シェアハウスの取り組みについて考えてみました。


■空き家の活用+住宅セーフネット制度
国土交通省は住宅セーフティネット制度の取り組みのひとつとして、
シェアハウスに注目しています。
入居者同士の支え合い、相互理解を前提とした住まいは
ひとり親世帯や単身生活に不安のある高齢者や障がい者に適した
居住形態と考えられています。

大家はもちろん、空き家を持て余した方にとっても
「シェアハウス」は空き家問題解決につながる一手です。

制度内では改修費や安い家賃の補助を実施していますが、
その分、良質なシェアハウスを用意するよう努めないといけません。

 

■有益な情報はガイドブックをチェック
国土交通省はシェアハウスを考えるオーナーのために
「共同居住型賃貸住宅(シェアハウス)の運営管理ガイドブック」
発行しています。
そこから「賃貸人向けシェアハウスガイドブック」のページについて
見てみましょう。

 
 1.共同居住型賃貸住宅(シェアハウス)について
シェアハウスの概要や空き家を活用することについてのメリットを紹介。
空き家を未活用した場合とシェアハウスとして活用した場合の
収支比較も掲載されているので、要チェックです。
準備から入居者募集、退去までの流れなども解説されています。

2.シェアハウスの管理方法
シェアハウスの管理方法は、
■オーナー自身が行う「自主方式」
・運営管理のコストを抑えることができる。
・入居者と直接コミュニケーションが取れる
・運営管理やトラブル対応の負担
・空室リスクを負う

■実務の一部を管理会社に任せる「委託方式」
・運営管理の負担が少なくなる
・管理委託費を支払う必要がある
・空室リスクを負う

■管理会社へ物件を賃貸してすべての実務を任せる「サブリース方式」
・運営管理のほぼすべてを任せるので、負担が少ない
・他の方式と比較して、賃料収入が少ない
・運営事業者から契約解除や賃料減額が可能になる

ハンドブックが作成された平成29年ごろは自主方式をとっている人が
半数近くを占めています。

●空き家等の既存ストックをシェアハウスにする場合
現在あるシェアハウスの70%以上が既存の空き家を活用したものです。
空き家に活用する場合、寄宿舎への用途変更が必要です。
100㎡を超えない建物については、空家となった一般戸建を改装して
「シェアハウス」とした場合、「寄宿舎」として該当しません。

100㎡を超える建物については、
通常の住宅では求められない間仕切り壁の準耐火性の確保が必要になります。

「寄宿舎」では、プライバシーが確保された独立して
区画された各部分「居室」に該当するものとして
・居室の採光(建築基準法第28条第一項)
・建築物の間仕切り壁(建築基準法施行令第114条第2項)
等の規定を満たすことが必要になります。

シェアハウスの改装には少なくとも100万はかかるといわれています。
とはいえ、規定を違反する「シェアハウス」は行政からの指導が行われる以前に、
火事が起こったとき、入居者の命を危険にさらすこともあります。
ずさんな計画で改築することは避けるべきです。

3.住宅確保要配慮者を入居者とする場合のポイント
改正住宅セーフティネット法に関連する新制度には
入居者だけでなく家主に対しても、様々な支援・補助があります。

■登録住宅の改修への補助
登録住宅の一定の改修工事について、国・地方公共団体が補助します。
●補助対象工事
・共同居住用住宅に用途変更のための改修工事
・間取り変更工事
・耐震改修工事
・バリアフリー改修工事
・居住のために最低限必要と認められた工事
・居住支援協議会等が必要と認める改修工事
※上記工事に係る調査設計計画(インスペクションを含む)も対象
●補助率と限度額
[補助率]国1/3(国と地方公共団体による補助の場合、国1/3+地方1/3)
[限度額(国費)]50万円/戸(専用個室)
ただし共同居住用住宅に用途変更するための改修工事、間取り変更工事、耐震改修工事のいずれかを含む場合は100万円/戸(専用居室)
●補助要件
・入居者は住宅確保配慮者に限定
・国による直接補助の場合、公営住宅の家賃水準以下であること
 国と地方公共団体による補助の場合、近接同種の住宅の家賃額と均衡を失しない額であること
・住宅確保用配慮者専用の住宅としての管理期間が10年以上であること
ほか細かい補助要件が設定されています。

国土交通省他、全国の居住支援協議会へ一度お問い合わせ下さい。

一般社団法人日本シェアハウス協会
http://japan-sharehouse.org/

一般社団法人日本シェアハウス連盟
http://japansharehouseorganization.com/

 

4.ターゲットを明確にする
ひと口に住宅確保要配慮者といっても、
高齢者、障がい者、外国人など、それぞれ住まいに必要としている条件が違います。
リフォームや募集のことを考えると、
入居者のターゲットは明確にした方が良いでしょう。

●障がい者(身体、知的、発達、精神)
こちらもひと口に「障がい者」といっても、
障がいの種類や程度により様々な特性があります。
シェアハウスの運営管理者だけでは、
すべてのケアや生活支援を担うことは難しく、また行う必要がない場合もあります。

市町村など相談・協力できる機関と連携をとりつつ、
運営管理者自身も入居者の疾患や障害の特性の基礎知識があれば、
想像するような問題や苦労は少ないでしょう。

●子育て世帯
ほかの家族と暮らすということで、ルールづくりが大事です。
といっても、「子育て」をする上で大切なことはおおむね一緒。
物を下に置かない、ダメなことをしたらきちんと叱る…など
そういった当たり前のルールは住んでいるうちにできるものです。

その中で特別気を付けたいのは
①食べ物の管理は保護者が行う
勝手に物を食べさせることは厳禁。
アレルギーはもちろんですが、しつけとして量を制限している人もいます。
もし保護者のいないところで何かを食べてしまったら
必ず報告するよう徹底しましょう。

②感染症が出た場合の準備とルールを決める
子どもがいるとどうしても病気は広がってしまうものです。
・消毒液やゴム手袋の常備
・手拭きタオルから使い捨てペーパータオルに変更
・予防接種などの推奨
など、感染拡大を防ぐオペレーションは
季節や流行り病に合わせて、変更していきましょう。

●外国人
文化、食生活、生活習慣、賃貸取引慣習が日本と異なるので、
その違いが原因でトラブルが発生してしまいます。
これはシェアハウスも賃貸物件でも同じ。
前もって賃貸借契約や生活ルールを丁寧に説明しましょう。

ガイドブックにはターゲット別の事例集もあるので、ぜひ参考にしてください。
「家賃の滞納が心配」「介護が必要になったり認知症になったら心配」といった
入居者に対する不安への対応策も解説していますよ。

 

そのほか、空き家のシェアハウス転用を検討する際に知りたい情報を得られる
窓口などを「シェアハウス経営を始めたい」
「見守り等の生活支援や自立に向けた支援」「公的な相談窓口」といった
カテゴリー分けして紹介されています。

 シェアハウスに興味がない方も、
賃貸経営をする上で役立つヒントがたくさん掲載されているので、
是非一度「賃貸人向けシェアハウスガイドブック」を見てみてください。