今回は、物件火災による損害賠償負担問題についての
事例を1つ取り上げてみました 🙄
【事例内容】
賃貸物件のある一室から火災が発生。
部屋中がススだらけになり一度、復旧工事行わなければ
住めない状態になってしまいました。
その為入居者は、火災発生時より調査期間中の約1週間
ホテルに宿泊し、さらに3週間、仮住まい生活になりました。
火災の原因は、電気工事に関連する物件の瑕疵ということが判明し、
入居者が原因ではないようです。
幸いにも部屋の復旧は出来ましたが、この場合、貸主として、
入居者に負担する賠償などの関係は一体どうなるのでしょうか。
1つずつ、疑問を解いていきましょう。
失火による責任については、「失火の責任に関する法律」※1が存在し、
「重大な過失」が存在しない限り、賠償責任などを負わないと
されていますが、これは、契約関係にある当事者間の責任には
適用されないと考えられています。
その為、賃貸人は、賃借人と賃貸契約を締結しており、 使用収益可能な
状態で賃貸物件を提供する義務があることからすれば、
「失火の責任に関する法律」の規定は、適用されず、火災により物件の
提供が出来なかった場合と因果関係がある範囲で、損害賠償責任を
負担する必要があります。
したがって、ホテル宿泊費、代替え物件での居住の費用を負担する
必要があると考えられます。
さらに火災時、衣類や家電などが損傷している場合、それに対する
賠償責任も負担することになります。
この場合、買い替える為の費用を求められることが多いですが、
基本的には、失った家電や衣類の価値を賠償することが原則であり、
新品を買い替える費用を負担しなければならないわけではありません。
(購入時期から減価償却した際の残存価値を負担するということ。)
これらの物理的な損害に加えて、精神的な損害に対する
慰謝料を考慮することも必要です。
例えば、火災時、現場に居たがゆえに、生命または身体に対する
危機を感じたとか、ホテルや代替物件に住むことによる
精神的苦痛などが挙げられます。
後者に関しては、賠償義務に値するかどうかは疑問がありますが、
前者の場合は、慰謝料等の支払い義務を生じさせる
原因になると考えられます。
★★まとめ★★
物理的な損害への賠償責任ももちろん大事ですが、目に見えない
精神的な損害に対する慰謝料やメンタルケアは、それ以上に大事ですね。
突然起こってしまったトラブルを、スムーズに解決できる為には
日頃より、住民の方との密なコミュニケーションが大切であると言えますね。
※1 「 失火の責任に関する法律(失火責任法あるいは失火法)」とは
「民法第709条 の規定は失火の場合にはこれを適用せず。
但し失火者に重大なる過失ありたるときはこの限りにあらず」(失火責任法)
日本は昔から木造家屋が密集しており、火災が発生すると
類焼しやすい住環境にありました。
自宅を失った上に延焼させた人に損害賠償責任を負わせるのは
個人の賠償能力をはるかに超える、といった様々な背景から
明治32年に制定された古い法律で、現在でも適用されています。