「エイジングインプレイス」シニアの賃貸を考える

3人に1人が高齢者となる日本。
今、「エイジングインプレイス」という
アメリカ発のライフスタイルが注目されています。

エイジングインプレイスとは、
住み慣れた地域で、その人らしく、最後まで健康的・快適に過ごすこと。

国土交通省による「マンション総合調査(2013年度)」を見ると、
マンションに住んでいる52.4%が「永住するつもりである」と答え、
「いずれは住み替えるつもりである」の17.6%を大きく上回りました。

1980年度では「永住するつもりである」は21.1%であったことも見ると
マンション暮らしから、いずれは一戸建て住宅へ住み替える
「住まいのステップアップ」はもう過去のものとなっていることが分かります。

また近年は定年後や子供が独り立ちした後の層が一戸建て住宅を売り払い、
便利の良い駅近のマンションへ住み替えることも増えています。

マンションはすでに、
多くの人にとって住み慣れた「終の棲家」となっているのです。

今回は「終の棲家」として見る、賃貸マンションを考えていきます。


最近はサービス付き高齢者向け住宅(サ高住・サ付き)のニーズも高まっていますが
介護を必要としない、軽介護で済む元気なシニアが増えた
高齢になったからと、住む家をかえたくない
周りがシニアばかりでハリをなくす
ペットを飼うなどの自由がなく、生きがいをなくしてしまう
ということもあり、一人になってもマンションなどの
一部屋を借りて生きていくことを望む人も増えています。

とはいえ、若い人向け、ファミリー向けの作りであることが多い賃貸マンション。
「手すりとか、バリアフリーとか対応するのが難しい 😥 」
と悩むオーナー様も多いのではないでしょうか?

しかし、これから増えてくるのはシニアの需要。
そこで必要になるのが「ユニバーサルデザイン」の視点です。

ユニバーサルデザインは誰もが、安全で使い勝手のいい場所づくりを表しています。

長く住んでもらうためには、人と一緒に家も変わっていかなければなりません。
「住みにくい」と感じるのはどこか、家や物件で一度考えてみることが大事です。

「歳をおうごとに、部屋がうまく片付かない… 😕 」
そんな悩みも収納場所を低くしたり、変えることで片づけやすくなり、
住みやすいと感じることができます。
ほんのちょっとの工夫やプチリフォームで住まいは改善されていくんです。

共用部の通路幅をあける。廊下に物を置かないようアナウンスする
段差を解消。スロープなどをつくる
車いすはもちろん、ベビーカーも通りやすくなります。
つまずきも少なくなり、事故を防ぐことができます。

手すりが必要になったらすぐつけられるように下地を補強
手すりがあるために大きな荷物が運べなかったり、
浴室の汚れが気になったり…普段使わない人にとっては
手すりは余計な存在 👿 に思えることもあります。
必要となった時に手すりをつけられるよう構造用合板などを
補強下地材にして、いつでも手すりをつけられるようにしましょう。
また置き型や着脱可能な手すりも販売されています。

オーダーメイドの賃貸にする
お風呂の暖房や玄関の腰掛などの設備を含め、
シニアがマンションに求める水準は高いですが、
その分、快適に暮らすために投資を惜しまない人が多いです。
家賃にプラスすることを条件に、オーダーメイドで改修を受け、
借主が愛着を持つ部屋に仕立てるのも空室解消の一手です

また「シニアも大歓迎賃貸」としてPRすることで
市町村によっては「補助」が出ることもあります。
例えば文京区では「スマイル住宅登録」を行い、区のホームページに掲載。
高齢者、一人親、障がい者を積極的に受け入れることを示すと
月1万円の補助金 💡 が入ります。また
エレベーターや段差バリアフリーなどの設備
ペットと住めるなどいきがいのあるマンション対応
死亡事故保険への加入を促す
など、シニアをサポートする仕組み作りで、さらに補助金 💡 をもらうこともできます。

こうした設備でもう一つ大切なのは
あくまで「利用者の補助、介護の軽減」であること。

安全に歩き、健康に暮らし続けられる住まいづくりが必要なのです。


設備以上に必要になっていくのが
町内会のように、孤独死を防ぐための見守りや地域にかかわる仕組みづくり
住み慣れた地域で生き続ける場所づくりです
それはシニア同士だけでなく、
多くの世代が関わることで年齢を越える「エイジフリー」な環境で実現するもの。

今その「エイジフリー」な住まいとして注目を浴びているのが「団地」です。
昭和30~40年代、あこがれの的だった「団地住まい」
そのころ、家族で入居した人たちも、今や年を重ね、
平成22年の調査によると、65歳以上の人が39%。
平均56.8歳となっていました。
ここから見ると、今団地に住んでいる人の多くが
定年を過ぎたシニアということが分かります。

多くの団地を管理するUR都市機構では今、「団地再生」として
団地リノベーションや多様な世代がいきいきと暮らし続けられるまちづくりを目指す
「ミクストコミュニティ」に取り組んでいます。

地域の子供たちが遊びに来れるような公園やお祭りを催したり、
農園をつくり、野菜を育て、近隣小学校の給食に使ってもらったり。
そんな関わりがシニアの「終の棲家」を彩っています。

一時の仮宿でない、どんな世代も愛着の持てる賃貸づくり。
それが今、求められているのかもしれません 🙂 。