▼プロが救う!あなたのピンチ!
『トラブルだ!困ったぁ~!!』 😥
そんなとき、誤った対処方法をしてしまうと、逆に損害賠償を請求されていまうことも。
自己判断で思い切った行動に出る前に、専門家の見解を聞いて、冷静に適切に対応しましょう。
このコーナーでは、オーナーの皆さまからのご相談事に、プロの先生にお答えいただきます 💡
☆お答えいただいたのは・・・
弁護士法人アヴァンセリーガルグループ 弁護士 武知 俊輔 先生
京都大学卒,大阪弁護士会所属。
大阪大学コミュニケーションデザイン・センター特任助教在職。
不動産関係のトラブルや企業間の法律問題,その他交通事故・労務問題等,民事一般の事案を幅広く担当。
ご相談はコチラまで⇒http://www.avance-lg.com(弁護士法人アヴァンセリーガルグループ)
敷居の高さを感じることなく、どんなことでもお気軽にご相談ください!
【今回の相談】
契約書に連帯保証人の捺印漏れがあり、いつまでたっても契約書が提出されない!!
契約時に契約書の連帯保証人の捺印漏れがあり、後日、捺印して提出してもらう約束で鍵を渡しました。
しかし、何度も督促したのですが、連帯保証人が忙しくて会えないと言われ、それから半年後の今もまだ提出されていません。
現在、手元に契約書も無く、連帯保証人の捺印がない状態です。
今のところは賃料は支払われているものの、このままでは何かあった時が不安です。
この場合、契約不履行で退去してもらうことは可能でしょうか?
💡 武知先生のアンサー! 💡
契約書の不備や連帯保証人の不存在は,原則として契約解除事由にはなりません!
賃貸借契約を巡るトラブルに発展する事案は,入居時から何らかの問題があることが残念ながら少なくありません。
本来は,トラブルになったときに事案の交通整理をし,合理的な解決を導くための契約書。今回のご質問は,その契約書の取り交わし自体がうまくいかなかったケースですね。
この事案については,まず
(1)賃貸借契約が有効に成立しているといえるか
(2)成立しているとしても,これを解除することができないか
という観点から検討してみたいと思います。
(1)賃貸借契約が有効に成立しているといえるか
そもそも賃貸借契約は,法的には,貸し手の「賃貸する」意思と,借り手の「賃借する」意思とが合致することのみで成立します。もちろん,賃料をいくらにするかなど,条件面での合意は必要ですが,契約書の作成や連帯保証人の存在は契約成立のための必要条件ではありません。
本件では,賃貸借契約書をきちんと交わせておらず,連帯保証人からも捺印を得られていない状況とのことですが,既に鍵を渡して賃料の収受がスタートしている以上,賃貸借契約が有効に成立していないと主張することは困難です。
(2)成立しているとしても,これを解除することができないか
では,貸主による要求にもかかわらず連帯保証人の押印をした契約書を差し入れないことを理由に,賃貸借契約を解除することはできないのでしょうか。
この点,連帯保証契約は,賃貸借契約とは異なり,法律上,書面を交わさなければ効力が認められません(民法446条2項)。
賃貸人側に契約書が残っていなければ、保証契約の成立を立証できないため,何らかの事故が生じたときに、連帯保証人に対して賠償請求を行うことは事実上不可能です。そうすると、このケースでは、連帯保証人がいない不安定な状態のまま存続していることになり、賃貸人としても何とかしたいと考えるのは自然なことでしょう。
しかし,賃貸借契約の解除が認められるためには,判例上,「当事者間の信頼関係が破壊された」と評価できるような事実関係が必要であるとされています。
そして,「信頼関係の破壊」を基礎づける最も重要な事情は,数か月間にわたるような賃料の不払い,あるいはそれに準ずるような不義理です。
賃料がきちんと支払われている限り、大概のことでは「信頼関係の破壊」が認められません。契約書が返って来なかろうと、連帯保証人が存在しなかろうと、結局のところ、何らかのトラブルが生じるまでは当該賃借人に対して強制的に退去を求めることは不可能であるということになってしまいます。
このようなトラブルは,賃貸借契約の成立を何らかの事情で急いだ結果,きちんとした書面を取り交わさずに鍵渡しを先行してしまったために生じたもので,トラブルの火種を抱え続けることは避けられません。
契約時には,拙速に住宅の引渡しを行うのではなく,必要な書類が全て揃っていることを確認した上で慎重に手続を進めるよう意識すべきでしょう。
なお,連帯保証契約について補足すると,契約は「書面」でありさえすればよいので,連帯保証人の捺印は実は不可欠というわけではありません。
しかし,不動産賃貸の実務では連帯保証人の印鑑証明書を添えて契約書に実印を押印するのが一般的ですから,押印がなかったり,三文判での印影しか残されていなかったりすると,トラブルになった際に連帯保証人が「自分が署名したのではない!」と主張する可能性があります。
そうなると,連帯保証人に対する請求が認められない結果も十分にあり得るところで,訴訟になる案件では,このような紛争が想像以上に多いのが実情です。
この観点からも,いくら信用のありそうな相手であっても賃貸時には必要かつ最低限の注意を払うことがいかに重要かはご理解いただけると思います。
武知先生、ありがとうございました!
誰でも人を疑ってかかりたくないものなので、信頼関係のもと、手続きを簡略化してしまったり、口約束だけで済ませてしまったり、ということはありますよね。
でも結局、後でトラブルになってしまったら、とても悲しい結末に・・・。
親しい間柄でも、むしろ、信用したい相手だからこそ、きちんと手続きを踏んで、お互いに気持ちの良い関係を続けられるようにすべきなのでは、と私は思います。
弁護士法人アヴァンセリーガルグループ http://www.avance-lg.com
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